日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルプ」の意味・わかりやすい解説
アルプ
あるぷ
Jean (Hans) Arp
(1886/1887―1966)
フランスのストラスブールに生まれ、ドイツ、フランスで活躍した画家、彫刻家、詩人。初めはドイツ・ロマン派の影響下に詩作を試みるが、1905年以降ワイマール、パリの美術学校に学び、1912年「青騎士」に参加。1916年にチューリヒ・ダダの創設に加わり、1920年にはケルン・ダダを展開する。さらに1920年代なかばからはパリでシュルレアリスム運動に参加し、1931年に「抽象―創造」の設立に関与するなど、一連のアバンギャルド芸術運動において中心的な役割を果たした。絵画、コラージュ、彩色レリーフ、彫刻と多様な作品を手がけたが、その特質は生命の自然生成を基本とした柔らかな有機的形体にある。「芸術は、人間の内部で成長する果実である」という彼のことばは、いわゆる抽象的な形体を創造しながらも、自作をあくまでも「具体的」なものと考えていた彼の制作理念を物語っている。
[千葉成夫]