繊維工業(読み)センイコウギョウ

百科事典マイペディアの解説

繊維工業【せんいこうぎょう】

製糸業紡績業化学繊維工業織物工業染色工業などの総称。広義には二次製品部門の縫製品工業メリヤスなどの編物工業を含む。繊維工業は18世紀後半英国で展開された産業革命において最初に機械制量産工業として成立した産業であり,資本主義の成立と発展の基礎となった。日本資本主義についても,その成立の指標が19世紀末における綿紡工業の成立に求められるばかりか,以後第2次大戦まで,製糸業,綿業が低賃金を武器に獲得した外貨で重化学工業化を図りつつ発展したといえるほどである。1930年代には日本の綿業,製糸業,人絹業は世界一の輸出量を誇り,繊維工業が工業生産全体に占める比重は,従業員,企業数で40%弱に達していた。重化学工業化の進んだ現在,その比重は著しく低下した。この間に各種繊維間の盛衰も著しく,伝統的な生糸から綿へ,綿から人絹・ステープルファイバーへ,そして現在の合成繊維へと重点が移ってきた。化学繊維では少数大企業の寡占,紡績では旧十大紡の優位が確立しているが,織布その他では中小企業の比重が高い。日本の繊維工業は,インド,パキスタン,香港,台湾,韓国などの急追に直面し,1970年代後半から産業構造の改善が行われ,原糸・織物中心からファッション産業への転換が進んでいる。1985年以後の円高は日本の国際市場における競争力を低下させ,1986年には繊維貿易は赤字に転化した。繊維品のライフサイクルが短くなり,高級化・個性化するなかで,その対応は困難なものとなっている。1997年の日本の繊維生産は天然繊維糸25万t,化学繊維糸(長繊維糸,紡績糸の計)107万t,合計132万tで,天然繊維糸では綿糸が18万t,毛糸が6万tを占め,化学繊維糸では合成繊維糸が95万tを占めている。
→関連項目化学工業工場排水消費財工業中京工業地帯

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世界大百科事典 第2版の解説

せんいこうぎょう【繊維工業】

繊維原料または繊維を加工して繊維製品を生産する工業。具体的には生糸を製造する製糸業,綿,化学繊維,羊毛,絹,麻などの糸を製造する紡績業,撚糸(よりいと)を製造する撚糸(ねんし)製造業,各繊維の糸から織物を製造する織物業(織物工業),ニット製品を製造するニット製造業,糸,織物などの染色,漂白などを行う染色整理業,綱や漁網を製造する綱・網製造業,レースや組紐(くみひも)などを製造するレース・繊維雑品製造業などがある。

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大辞林 第三版の解説

せんいこうぎょう【繊維工業】

綿糸・毛糸・麻糸・生糸・化学繊維などの紡績および織物の工業。

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世界大百科事典内の繊維工業の言及

【軽工業】より

…この理由は,軽工業のほうが少ない資本で興すことができ,また生産技術もあまり高度のものを必要としない場合が多いからである。日本の経済発展においても,明治時代に本格的な工業化が始まったとき中心的な役割を果たしたのは,軽工業,なかでも繊維工業である。1935年ころまでは,日本の製造業のなかで最も生産額が大きいのは繊維工業であり,次いで食料品工業であった。…

【日本資本主義】より

…日露戦争後には,それらはほぼ世界的技術水準に到達し,財閥系製鋼所の成立と相まって,造船業の自立化を達成し,鉄鋼自給率を上昇させたが,なお機械工業は一般的に低位にとどまり,鉄鋼自給率も低く,生産財および軍需品の多くを輸入に依存した。
[繊維工業の主導性]
 第3に,それと対照的に繊維(紡織)工業が民間の工場制工業発達において主導的地位を占め,資本主義経済の基軸を構成していったことである。日本の繊維工業は綿業と絹業の二大部門から構成されていたが,工場制工業の発達を主導したのは綿業の紡績業と絹業の製糸業である。…

※「繊維工業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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