日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリーンソードテール」の意味・わかりやすい解説
グリーンソードテール
ぐりーんそーどてーる
green swordtail
[学] Xiphophorus hellerii
硬骨魚綱カダヤシ目カダヤシ科に属する淡水魚。ソードテールの名称は、雄の尾びれの下部が剣状に著しく伸長することに由来する。ツルギメダカともいう。以前はソードテールといっていたが、沖縄県や山梨県などで野生化し繁殖しているものに、グリーンソードテールの和名が2013年(平成25)に与えられた。以前はメダカ目であったが、目の名称の由来となっているメダカがほかの目へ移ったことから、メダカ目の名称もカダヤシ目に変更された。メキシコ南部からグアテマラが原産地で、上流から河口にかけて生息する。近年、観賞用として世界の各地で飼育されている。生息域が広いので、生息地によって体形、体色、鱗(うろこ)の数などが異なり、変異しやすい。頭は小さく、尾柄(びへい)が高くて躯幹(くかん)部よりすこし低い程度である。臀(しり)びれも雄では第3から第5軟条が交接脚(こうせつきゃく)となり、これで精子を雌の体内に入れ込む。体は雌で12センチメートルになるが、雄は普通数センチメートルである。体色は、原種では緑色または淡黄褐色で、橙(だいだい)色または赤色の斑点(はんてん)が1個ある個体もある。
雌のうち半数くらいが6センチメートルごろから性転換して雄になり、それに伴って尾びれの下部も伸びる。胎生で体内受精し、雌親は150尾またはそれ以上の胎仔(たいし)をはらむ。水生の生物をなんでも食べる。雄は縄張り(テリトリー)をつくる性質がある。
観賞用として、突然変異や近縁種のプラテーXiphophorus maculatusとの人工交雑により、選抜を重ねて商品的に価値のあるいくつかの品種が育成されている。とくにレッドソードは体が多少とも高まり、朱紅色でもっとも人気がある。また、体の下側面が黒いタキシードソード、黒点が散在したサラサソード、オレンジ色の体色に青色の帯があるネオンソードテール、背びれが長いセールフィンソード、尾びれの上部と下部のみがとくに長くて竪琴(たてごと)形になったライアソードなどがある。本種は、遺伝学や肉腫(にくしゅ)、癌(がん)などの実験材料としても利用されている。
[落合 明・尼岡邦夫]