けんか祭(読み)けんかまつり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「けんか祭」の意味・わかりやすい解説

けんか祭
けんかまつり

祭りなかで,複数の集団の間で人や神輿などが激しくぶつかり合う行事。また,行事そのものとしてではなく,行事を行なうなかで複数の集団間で争いが起こることが恒常化している祭りもけんか祭と呼ばれることがある。行事としてけんかが見られる場合,その勝敗によって一年の豊凶を占う行事と理解されがちだが,そのような意味を見出すことができない祭りも多い。むしろ,日常的な社会関係や秩序をいったん停止して,生身の人間としての力がものをいう状態に回帰することで,あらためて関係を構築し人も社会も再生するという,隠れた意味も見出される。実際,祭りのなかでのけんかは,日常には持ち越さないとされ,祭りが終われば,また穏やかな関係が戻ってくるのが普通であり,より関係が深まるとされる場合もある。神輿をぶつけ合う兵庫県姫路市妻鹿けんか祭や,屋台をぶつけ合う岩手県陸前高田市のけんか七夕など,全国には数多くのけんか祭りがあり,物理的なぶつけ合いはなくても,隣接集落との間で激しくののしり合う岩手県一関市大東町の悪口神様(→悪口祭)のような行事もある。

けんか祭[妻鹿]
けんかまつり[めが]

毎年 10月14~15日に行なわれる,兵庫県姫路市白浜町の松原八幡神社秋祭り。古くからの灘七村の祭りで,14日の宵祭りには,七つの村から出された屋台が,赤や青,黄色の紙で飾ったシデ竹を持つ人々とともに各地区を練って八幡宮に宮入りし,その後,「七台練り」と称して神社前で激しく練り合わせる。屋台はこの地方独特の神輿型の太鼓台で,中には太鼓とそれをたたく子供が乗っている。翌 15日の本祭りでは,「一の丸」「二の丸」「三の丸」と呼ばれる 3基の神輿が,7台の屋台とともに約 1km離れた御旅山に渡御する。3基の神輿は,20代,30代,40代の年齢集団ごとに担がれており,御旅山の練り場に着くと,神輿同士を激しくぶつけ合う。同時に,屋台同士の勇壮な練り合わせも行なわれ,祭りの場は興奮に包まれる。神輿が破壊されることもあるが,神輿を激しくぶつければぶつけるほど,神意にかなうとされている。(→けんか祭妻鹿

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