日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウガイビル」の意味・わかりやすい解説
コウガイビル
こうがいびる / 笄蛭
Bipalium
扁形(へんけい)動物門渦虫(かちゅう)綱コウガイビル科Bipalidaeの動物の総称。陸上生活をするウズムシ類で、コウガイの名は、頭部の形が日本髪の笄(こうがい)の形に似ていることから生じている。東南アジアなど、熱帯、亜熱帯の森林に多いが、一部は温帯にも分布する。体長5~12センチメートル、幅2~4ミリメートルで、細長い。背面は黒色か、黒みがかった橙(だいだい)色で、種類によっては1本または3本の黒線がある。頭は扁平で横に半月形に伸び(いわゆる笄の形で)、頸部(けいぶ)は細い。多数の眼点が頭部や頸部の縁に沿って並んでいるが、肉眼ではわからない。口は腹面の中央にある。おもに夜間に活動するが、比較的高温高湿の時期には、昼間でも地上や石の下、温室内などをゆっくりはっているのをみかける。はった跡には粘液がつき、体に触れると数片に切れて(自切)扱いにくい。
日本の普通種は、クロイロコウガイビルBipalium fuscatumで、体長10センチメートルぐらい。雨上がりの路上や庭、台所などでみられ、頭部の前縁を波状に動かしてはう。ミスジコウガイビルB. trilineatumは、体長4~5センチメートル、背面は濃い橙黄(とうこう)色で3条の黒線が縦走する。最近は温室などでもみかけられるが、山野の湿気のある地上や石の下などにすむ。コウガイビルはその名を「公害ビル」と誤認されることがあるが、無害である。
[峯岸秀雄]