ロシアが旧ソ連時代から実験や科学研究および軍事利用を目的として打ち上げている一連の人工衛星。ロシアの人工衛星の6割以上を占め,1962年3月16日にコスモス1号が打ち上げられて以来94年末までにその数は2200を超える。初期はほとんどが科学衛星および実験衛星であったが,しだいに軍事衛星が多くなり,近年では逆に軍事衛星が大半を占めるようになっている。非軍事用のものは,宇宙環境の探査など広範囲な科学分野での活躍をはじめ,有人飛行や実利用分野の宇宙技術確立のための実験的・先駆的衛星としてソ連宇宙開発計画に大きく貢献してきた。気象衛星メテオールシリーズのためにはコスモス44号,通信衛星モルニヤシリーズのためにはコスモス41号が,そして有人宇宙船ソユーズシリーズのためにはコスモス133号がそれぞれに先駆けて打ち上げられている。軍事衛星としてのコスモスは,航行,早期警戒,海洋監視,偵察のほか衛星攻撃実験を目的としても打ち上げられているが,この中で注目されるのは海洋監視衛星と衛星攻撃実験衛星(キラー衛星)である。海洋監視衛星はアメリカ海軍の動きを監視するためのもので,この衛星にはレーダーに大電力を供給するために原子炉を積載しているものもある。1978年1月にカナダに落下したコスモス954号も,この原子炉を積載した海洋監視衛星で,原子炉部分を切り離して高い軌道に打ち上げる作業に失敗し,燃え尽きずに地球に再突入したものである。またキラー衛星は1977年から開発が始められ,81年にはターゲットであるコスモス1241号とキラー衛星のコスモス1258号の間で実験が行われた。コスモス衛星はロシアの宇宙開発計画にとって特別の存在であり,今後もかなりの頻度で打ち上げられるものとみられる。
執筆者:広浜 栄次郎
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…気象要素を観測したり,無人の観測所や船舶等から気象観測資料等を収集する機能を持った人工衛星。地球表面から800~1000kmぐらいの高度を比較的短い時間(1時間40分前後)で地球を1周する中高度気象衛星と赤道の上空3万5786kmにある静止気象衛星がある。静止気象衛星は衛星直下点を中心に半径7000kmの円内を観測できるという利点があるが,赤道上空にあるために極付近の観測はできない。また小さな現象の観測にも不向きである。…
※「コスモス衛星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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