コニャック(読み)こにゃっく(英語表記)Cognac

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コニャック」の意味・わかりやすい解説

コニャック(ブランデー)
こにゃっく
cognac フランス語

フランスの西部、コニャック市を中心としたシャラント地方(シャラント県とシャラント・マリティーム県)のみでつくられるブランデー。1909年の政令によって原産地呼称令が定められたが、その後改定され、現在は地域を六つに区分してその区域内でつくられるブランデーは、コニャックの名称のほかに区域名を呼称してもよいとされている。このうちグランド・シャンパーニュ、プティト・シャンパーニュ産のものが良質で、この2地区の生産品に限りフィーヌ・シャンパーニュfine champagneと表示できる。フィーヌはフランス語で「上等」の意味である。

 原料のブドウ大部分がシャラント産のサンテミリオン種で、これから得られる酸味の多い白ワイン(アルコール分は約9%)を蒸留する。蒸留にはシャラント型ともいわれる特殊な単式蒸留機が使用されて、2回に分けて行われる。加熱方法は直火式で、まずアルコール分25%程度の粗留液をとり、これをふたたび蒸留してアルコール分60~70%にする。コニャックの貯蔵に使う樽(たる)はリムーザン産のカシ材で、樽中で長い間熟成させる。この間に新酒の粗さが消え、丸くなり、色も琥珀(こはく)色に変わっていく。最後ブレンドして風味を調製し、出荷する。

 コニャックとして市販されるものには製造年の表示はない。これは、異なった年数のものがブレンドされているからである。ただ商業上、各メーカーによっては熟成年数の目安として、マーク記号をつけて貯蔵年数の古さを表示している。コニャックの古さを示す記号と貯蔵年数の関係は、三つ星が3~5年、VSOPは10~20年、ナポレオンは30~40年、エキストラは40~50年といわれている。ただしここで注意すべきことは、この年数はブレンドされたブランデー原酒のうち、もっとも古いブランデーの年数を表しており、酒の古さのだいたいの目安にすぎない。なお法律的には、VD、VSOPは最低4年以上、ナポレオン、エキストラは最低5年以上となっている。

[原 昌道]


コニャック(フランス)
こにゃっく
Cognac

フランス西部、シャラント県の町。シャラント川に臨む。人口1万9534(1999)。ワインを蒸留したブランデーの一種コニャックの産地として有名で、関連産業であるコルク加工、瓶・樽(たる)製造などの工業もある。16世紀以来、新教徒の中心地の一つであったが、1685年の「ナント勅令」廃止により衰退する。しかしフランス革命以後コニャック酒生産の発達とともに繁栄を取り戻した。フランソア1世の生誕地。

[青木伸好]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コニャック」の意味・わかりやすい解説

コニャック
Cognac

フランス西部,シャラント県西部の町。アキテーヌ盆地のシャラント川左岸にのぞむブドウ栽培地の中心で,コニャックと呼ばれるブランデーの産地として世界的に有名。マーテル,ヘネシー,オタールなどの会社の酒倉があり,樽,栓,瓶の製造なども盛ん。ユグノー戦争 (1562~98) ではプロテスタントの拠点となり,ナントの勅令廃止により一時衰退したが,1787年ブランデー製法発見以来再び繁栄。要塞門跡 (13世紀) ,バロア家の旧城址,空軍航空学校などがある。人口2万 247 (1982) 。

コニャック
cognac

フランスのコニャック周辺で造られるブランデー。ヘネシー,マーテル,クルボアジエなど多くの会社があり,いずれもその地方の農家や小醸造家の製品を集め,ブレンド,貯蔵して出す。

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