イギリスで1950年代に開発された黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉で、燃料には天然ウランが使われる。初号機が立地した地名コールダーホールCalder Hallにちなんで、コールダーホール型原子炉と称される。燃料被覆材にマグネシウム合金であるマグノックスを使用していることから、マグノックス炉ともいう。日本で最初の商業用発電炉は、イギリスから導入されたコールダーホール改良型原子炉で、1966年(昭和41)に営業運転を開始した。その電気出力は16.6万キロワットであったが、すでに廃炉措置がとられている。この型の原子炉は、出力密度が小さいことが特徴である。アメリカで商業用発電炉として軽水炉が開発されて以来、原子力発電の主流は軽水炉で占められ、1990年代にはイギリスにおいても軽水炉が導入されている。
減速材の黒鉛は中性子のエネルギーの一部を吸収し、結晶格子のひずみとしてそのエネルギーを蓄積し、思いがけないときにそのエネルギーを放出して黒鉛や周りの物質を熱する。このような現象を、発見者である物理学者ウィグナーにちなみ、ウィグナー効果といい、蓄積されるエネルギーをウィグナー・エネルギーという。このエネルギーは、ときどき人工的に放出してやる必要があり、これをウィグナー放出という。
[桜井 淳]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…革新的新技術の実用化初期の段階では,このような予想外の問題が発生することは決してめずらしいことではない。しかし,アメリカにおける軽水炉技術が進歩し,アメリカ国内での軽水炉発電の急速な伸展がみられつつあったことから,日本でもそれ以降は,コールダー・ホール型原子炉にかわって軽水炉を導入することとなった。日本原子力発電は67年2月に沸騰水型炉を福井県敦賀市に,関西電力は同年8月加圧水型炉を福井県三方郡美浜町に,東京電力は同年9月に沸騰水型炉を福島県双葉郡大熊町に,それぞれ建設を開始した。…
…原発反対運動の一定のひろがりの後にようやく核兵器反対運動への転化が見られるアメリカの運動とはこの点で異なっている。しかし原子力発電論争の萌芽でもあったコールダー・ホール型原子炉導入をめぐる論争の中には,エネルギー問題,資源問題,安全問題,発電原価問題などすべての側面が含まれていた。 本格的な論争のひろがりは60年代の後半,電力業界がアメリカからの軽水炉の大量導入を推進するとともに生じた。…
※「コールダーホール型原子炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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