日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
サグラダ・ファミリア教会
さぐらだふぁみりあきょうかい
スペイン(カタルーニャ)のバルセロナにある未完の大規模な教会堂建築。建築家ガウディが、31歳の時から74歳の死に至るまで、ほとんどその全生涯をかけて建設に携わり、デザインを行った。起工からすでに1世紀以上が過ぎた今もなお工事が進められており、完成時期のめどもたっていない。この建築はもともと、ガウディの師でもあった建築家ビリャールFrancisco de Paula del Villar y Lozano(1828―1903)によって始められたが、1883年11月、ガウディが後任としてその仕事を引き継いだ。87年地下祭室が完成したのに続き、91年、後陣アプス(キリスト教聖堂において、入口と反対側の身廊の端部に設けられる張り出し部分のこと。アプスと身廊の間に方形または長方形の空間を加えてここを聖職者席とし、アプスに大祭壇を配置してここを聖所とした)部分の外壁が建ちあがった。1903年以後、完成時には東側袖廊(しゅうろう)のファサード(正面)となる、キリストの地上への降誕を表現しようとする玄関前面とその上にそびえ立つ4本の高塔の工事が進められ、ガウディの死の直後の1930年までに完了した。その後スペインの内戦と第二次世界大戦によって中断した工事は、ガウディが遺(のこ)した基本構想やデザインやスケッチなどをもとに、戦後再開され、東側の「降誕の門」と対となる西側の「受難の門」、つまりキリストの死を象徴するファサードと4本の高塔が完成した。そして正面玄関部分には、キリストの生と死を超越した世界を象徴する「栄光の門」が建設されることになっている。この門を東西で固める外壁工事が順次進められている。やがて「栄光の門」が完成し、さらにこの外壁全体の上に高く広大な屋根と塔を架け、身廊と袖廊の交差部にキリストを象徴する高さ170メートルの高塔を建てあげたときには、ガウディのゴシックの空間解釈の究極を示すキリスト教の教会堂建築に、前例のないような壮大で有機的な内部空間が出現するはずである。はたしてその完工の時が21世紀中に訪れるかどうかは定かではない。
[長谷川堯]
『細江英公著『ガウディの宇宙1』(1992・集英社)』▽『中山可穂著『サグラダ・ファミリア』(1998・朝日新聞社)』