ガウディ(読み)がうでぃ(英語表記)Antonio Gaudí y Cornet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガウディ」の意味・わかりやすい解説

ガウディ
がうでぃ
Antonio Gaudí y Cornet
(1852―1926)

スペインカタルーニャ)の建築家。6月26日カタルーニャのレウスに生まれる。父は銅細工師で、経済的にはあまり恵まれない環境に育った。1874年バルセロナの建築学校に入学したが、在学中からビリャールFrancisco de Paula del Villar y Lozano(1828―1903)やフォントセレJosep Fontsere i Mestres(?―1897)などの著名な建築家の仕事を手伝って実務を学んだ。78年の卒業後、マタロ労働者協同組合機械工場(1882)の設計手始めに、精力的な設計活動を開始した。たとえば、ビセンス邸(1885)、別荘「エル・カプリチョ」(1885)、グエル別邸(1888)、グエル邸(1889)などが彼の初期を飾る作品群であり、いずれもスペインに特有のイスラム系デザインの投影がみられる美しい装飾的細部をもつ。この時期の仕事を通して、建築家としての彼の後の生涯に重要なかかわりをもち、パトロンとなったコミリャス侯爵やグエル家の人々と出会っている。

 1883年には、ガウディは、ビリャールから引き継いで、バルセロナのサグラダ・ファミリア教会の設計責任者となり、この仕事は彼の死に至るまで続いた。

 1890年代には、聖テレジア学院(1890)や、アストルガ監督教会司教館(1893)、レオンのボチネス邸(1894)などがつくられたが、この時期にはゴシック系のデザインがしばしば取り入れられた。1892年にはモロッコに旅し、タンジールのフランシスコ修道会の建物の設計を行ったが実現しなかった。

 1900年を境にして、ガウディの設計は前期と後期に分かれる。20世紀に入ると、ガウディは過去の建築様式制約からほとんど自由になり、大胆な構造による空間と、奔放な意匠と装飾をもつ、きわめて独創的な作品を実現するようになる。たとえば、カサ・カルベット(1904)、カサ・バトロ(1906)、カサ・ミラ(1910)などの一連の住宅建築の傑作が一方にあり、他方にはグエル公園(1900~14)、コロニア・グエルの聖堂(1908~14、地下祭室のみが実現)などの仕事があった。とくに注目すべき点は、大規模な空間を被覆する建物の設計で彼が示した創意に満ちた構造的な処理方法であった。

 また1883年以来のサグラダ・ファミリア教会の仕事は、最初に地下祭室を完成させたのち、アプス(後陣)の外壁面、付属幼稚園キリストの降誕を象徴する東側袖廊(しゅうろう)のファサード(正面)と4本の塔などを完成させた。しかし、ガウディはバルセロナで交通事故により1926年6月7日に没した。工事は一時中断したが、第二次世界大戦後、彼のデザインをもとに工事が続けられ、西側袖廊のキリスト受難を象徴するファサードと塔が現在完成している。

[長谷川堯]

『中山公男・磯崎新他編『ガウディ全作品』全2巻(1979・六耀社)』『中山公男・東野芳明他著『ガウディを〈読む〉』(1984・現代企画室)』『バセコーダ解説、石崎優子・入江正之訳『ガウディの作品』(1985・六耀社)』『入江正之著『アントニオ・ガウディ論』(1997・早稲田大学出版部)』『北川圭子著『ガウディの生涯』(朝日文庫)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガウディ」の意味・わかりやすい解説

ガウディ
Gaudí y Cornet, Antonio

[生]1852.6.25. レウス
[没]1926.6.10. バルセロナ
スペインの近代建築家。スペインのアール・ヌーボー建築の代表者。1869年頃からバルセロナに住み,1878年バルセロナの建築学校を卒業。ウージェーヌ=エマニュエル・ビオレ=ル=デュクやジョン・ラスキンの著作に影響され,ゴシック様式(→ゴシック建築)の近代化に努め,ムデハール様式やカタルニャの生活環境の伝統を受け継ぎ,動植物から直接ヒントを得た形態を建築に取り入れた,特異な様式を完成。その曲線主体のデザインや,彩陶タイルを用いた多彩な装飾は,ガウディを 20世紀の最もユニークな建築家と位置づけている。代表作にはバルセロナのビセンス邸(1878~80),グエル邸(1885~89),グエル公園(1900~14),カサ・バトリョ(1904~06),カサ・ミラ(1905~10),未完の大作サグラダ・ファミリア聖堂(1883~ )などがある。

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