知恵蔵 「サブリミナル効果」の解説
サブリミナル効果
1957年に米国の広告業者が雑誌に掲載した「実験」から、サブリミナル効果が世に知られるようになった。「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」という1コマだけの文字メッセージを繰り返し差し挟んだフィルムを放映した映画館で、コーラとポップコーンの売り上げが急増したという。しかし、再現実験では実証されず、後になって虚構であることが知れたため、心理学の分野では学説として認められていない。しかしながら、仮に事実とすれば広告主にとっては「魅惑的」であり、消費者にはある種の脅威となるので、マスコミによりセンセーショナルに取り上げられた。また、「サブリミナル効果を洗脳手段に使う」という設定のサスペンスドラマや映画もある。サブリミナル効果ではないが、記憶についてのある種の無意識的な効果が知られていることなどから、この「実験」が事実であったかのごとく誤認し、過大に取り上げるケースも一部に見受けられる。サブリミナル効果の応用であると主張する睡眠学習法や、深層心理に働きかけて成功に導くCD・DVDなどを販売するなどの便乗商法も後を絶たない。
テレビ放送においても、サブリミナル的なコマ挿入であると批判された例があり、日本民間放送連盟は表現倫理の観点から「視聴者が通常、感知し得ない方法によって、なんらかのメッセージの伝達を意図する手法(いわゆるサブリミナル的表現手法)は、公正とはいえず、放送に適さない」と放送基準に定めており、NHKにも同様の基準がある。NHKの大河ドラマ「天地人」では、2009年5月に放映した信長の最期のシーンに「天」・「地」・「人」をそれぞれイメージする3つのごく短いカットが挿入されていた。これについて、サブリミナル的手法ではないかと話題になったが、同局は信長の心理を表現した「短くても知覚できる」演出効果であるとコメントしている。
(金谷俊秀 ライター / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報