日本大百科全書(ニッポニカ) 「サン・クレメンテ聖堂」の意味・わかりやすい解説
サン・クレメンテ聖堂
さんくれめんてせいどう
Chiesa di San Clemente
ローマ市内のコロセウムの近くに建つ聖堂。地下には2世紀の建築の遺構をはじめ、もう一つの聖堂の遺構をもつ複雑な構造となっている。古い聖堂つまり「下の教会」の創建は4世紀にさかのぼり、現状は9世紀の大改修のプランが残されている。また6世紀から12世紀のフレスコ壁画の断片も認められる。1084年にはロベルト・グイスカルドのローマ略奪の際に火災を受けた。1128年、教皇パスクアーレ2世の時代に新たに「上の教会」が完成した。上の教会はアトリウム(前庭)をもつ三廊式バシリカ型会堂で、アプスの「勝利の十字架」を描いたモザイクや舗床モザイクを含めて全体が、当時の初期キリスト教美術への復古主義を示す代表的な作例となっている。また祭壇、天蓋(てんがい)(バルダッキーノ)、身廊中央部の聖歌隊席も12世紀当時の姿をよくとどめている。
[名取四郎]