改訂新版 世界大百科事典 「サンゴヘビ」の意味・わかりやすい解説
サンゴヘビ (珊瑚蛇)
coral snake
美しい縞模様と強い神経毒をもつコブラ科の毒ヘビの一群。サンゴヘビ類の大部分の約48種が含まれるサンゴヘビ属Micrurusが,中南米の熱帯地方に分布し,アリゾナサンゴヘビ属Micruroides1種がアメリカ合衆国およびメキシコに分布する。小型で細長く全長50~100cm,最大でも120cmほど。赤色,黄色,黒色の帯模様をもち,きわめて類似しており,わずかに色帯の幅などが異なっている。サンゴヘビの鮮やかな色彩は,自然の中でよく目だつ標識色の一つの警告色であり,ほとんどが昼間に行動する。毒性は激しいものの,小型で口も小さく性質もおとなしいため,人が受ける咬症(こうしよう)の被害は少ない。餌はおもにトカゲ類。サンゴヘビの生息地域には,外見上はまったくそっくりであるが無毒のニセサンゴヘビの仲間が生息し,擬態の好例とされる。なお,ニセサンゴヘビ類にはサンゴヘビモドキSimophis rhinostomaやスカーレットキングヘビLampropeltis triangulumなど,まったく無毒の種類と,弱毒をもつチュウベイニセサンゴヘビRhinobothryum bovalli(英名Central American false coral snake)がある。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報