ザグレブ(読み)ざぐれぶ(英語表記)Zagreb

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザグレブ」の意味・わかりやすい解説

ザグレブ
ざぐれぶ
Zagreb

クロアチア共和国の首都。オーストリア名アーグラムAgram。クロアチア北西部、サバ川河畔のメドベドニツァMedvednica丘陵斜面に位置する。ザZaは後方、グレブgrebは丘陵の意。クロアチア第一の都市で、人口77万9145(2001)。中部ヨーロッパや南東ヨーロッパとアドリア海岸とを結ぶ鉄道、道路の要所であり、国際空港がある。旧ユーゴスラビアの近代工業の中心地で、全国の工業生産の約10%をあげていた。とくに機械、金属、電気、化学工業が盛んで、かつてのユーゴでも最大級であった電気機器工場がある。サバ川河畔には国際見本市の会場もある。また、科学芸術アカデミー、総合大学、音楽大学、美術大学、原子力研究所など、教育・研究施設も多い。

[漆原和子]

歴史

1094年に司教座が置かれ、1242年タタール人の侵入後、グラデッツGradec(現在の上町地区)が王国自由都市となり、要塞(ようさい)が築かれた。この地区にはゴシック様式の聖マルコ教会、バロック様式の聖カタリナ寺院、ネオ・クラシックのドラスコビツ城がある。また、カプトルKaptol地区には1466年以後防御の濠(ほり)が巡らされ、この地区には13世紀のフレスコ画のある聖具安置所やゴシック様式の大聖堂を伴った聖ステファン寺院がある。1830年代には南スラブの統一とクロアチアの自治独立運動の中心的都市となり、文学者、政治家のガイが運動を主導した。運動に強い思想的影響を及ぼした司教シュトロスマイエルは、ユーゴスラビア科学・芸術アカデミー(1867)やザグレブ大学(1874)の創設にも加わった。1880年地震にみまわれ、以後、近代都市に生まれかわった。1918年にはセルビア人、クロアチア人、スロベニア人の統一を目ざした国民評議会がザグレブに設立され、単一国家結成の決議がなされた。1941~45年のクロアチア独立国樹立の際にはその首都となった。その後旧ユーゴスラビアに属していたが、1991年クロアチアは独立した。

[漆原和子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ザグレブ」の意味・わかりやすい解説

ザグレブ
Zagreb

クロアチアの首都。同国中部,ドナウ川の支流サバ川左岸に位置する。 1093年カトリック司教区設立。 1242年にはハンガリー王ベラ4世のもとで自治都市となり,クロアチアにおける有数の都市として栄えた。オーストリア=ハンガリー帝国支配時代以降は,常にクロアチアの政治の中心となってきた。ヨーロッパ中西部と,バルカン半島,アドリア海を結ぶ交通の要地を占め,鉄道,幹線道路が集まるほか大空港もある。金属,電機,農機,化学,繊維,石油精製などの諸工業が立地し,クロアチア第1の工業都市となっており,大学,博物館,美術館,音楽院,劇場などの文化施設も多い。また丘の上の旧市街には,ゴシック様式,バロック様式の聖堂をはじめ,修道院,豪邸など 13~15世紀頃の建築物が残り,広場,公園の多い美しい町としても知られ,小ウィーンの呼び名もある。人口 68万6568(2011)。

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