アドリア海(読み)アドリアカイ(英語表記)Adriatic Sea

デジタル大辞泉 「アドリア海」の意味・読み・例文・類語

アドリア‐かい【アドリア海】

Adriatic Sea地中海北部イタリア半島バルカン半島にはさまれた海。古来、重要な海上交易路。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「アドリア海」の意味・読み・例文・類語

アドリア‐かい【アドリア海】

  1. ( アドリアはAdria ) 地中海北部の海。イタリア半島とバルカン半島に囲まれた細長い入り海。沿岸ベネチアトリエステなどの都市がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アドリア海」の意味・わかりやすい解説

アドリア海
あどりあかい
Adriatic Sea

地中海の一部をなし、イタリア半島とバルカン半島に挟まれた海域。南東端のオトラント海峡から北西端のベネチア、トリエステ両湾へと、長さ約800キロメートル、幅約90~200キロメートルで広がる。面積約13万2000平方キロメートル。イタリア側の海岸線は、ポー川のデルタ地帯、およびベネチアやグラードラグーン地帯を除けば、概して単調である。それに対して、ディナル・アルプス山脈が走り、カルスト地形が広範にみられるスロベニアからクロアチアにかけての海岸線は、出入りが激しく、沖合いには多くの島々が散在する。海深はトレミティ諸島を境にして、一般に北西部に浅く、南東部に深い。最深部は1250メートル。水温は、夏季には25℃になるが、冬季になると冷たい北東風ボラと海深の浅さのため北西部では5~6℃にまで下がる。塩分濃度は33~38の幅をもつが、奥に入るほど低下し、ベネチア湾では地中海中で最低の濃度を示す。古来、重要な海上交易路で、紀元前8世紀以降エトルリア人、ギリシア人、ローマ人、ビザンティン帝国などの支配下にあった。10世紀以後、徐々にベネチアの影響下に入り、とりわけ地理上の発見まではヨーロッパとアジアを結ぶ通商路として決定的な役割を果たした。現在イタリア側にはトリエステ、ベネチア、ブリンディジ、クロアチア側にはリエカスプリトドゥブロブニクなどの港や保養地がある。

[堺 憲一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「アドリア海」の意味・わかりやすい解説

アドリア海 (アドリアかい)
Adriatic Sea

イタリア,バルカンの両半島に挟まれた地中海の内海。オトラント海峡によって南のイオニア海と隔てられている。北部は比較的浅い(100~200m)が,南部では1000mを超える所がある。バルカン半島側は,海岸線が複雑で,沿岸に無数の島が見られるのに対し,イタリア側は概して単調で自然の良港に乏しい。また広大なデルタ地帯を形成しているポー河口以北では,ベネチア周辺のように,河川が運ぶ土砂の堆積によるラグーンが発達している。メッシナ海峡が激しい潮流を伴うため,この海域は古来ローマと東地中海地域とを結ぶルートとして重要視された。とくに11世紀以降はベネチア共和国が制海権を獲得し,東方貿易の舞台としてにぎわい,ベネチア湾と呼ばれたこともあったが,インド航路発見とともに重要性が薄れた。ベネチア没落以後は,トリエステを軍港とするオーストリア帝国が主導権を握り,トルコ帝国とにらみ合った。その後,局地的沿岸交易の場に甘んじてきたが,近年,沿岸の工業化,観光地化によって再び活況を呈しつつある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「アドリア海」の意味・わかりやすい解説

アドリア海【アドリアかい】

地中海の一部で,イタリア半島とバルカン半島に囲まれる海域。英語でAdriatic Sea。オトラント海峡でイオニア海に通じ,北端部はベネチア湾と呼ばれる。水深は北部では200m以下で,南部では1000mをこえるところもある。ベネチア,アンコナ,バリ,リエカ,ドルレスなどの港がある。古来ローマと東地中海地域を結ぶルートとして重視され,11世紀以降はベネチア共和国が制海権を握っていたが,インド航路発見とともに重要性が薄れた。
→関連項目イオニア海イタリアセルビア・モンテネグロ地中海モンテネグロ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アドリア海」の意味・わかりやすい解説

アドリア海
アドリアかい
Adriatic Sea

イタリア語ではマーレアドリアーティコ Mare Adriatico。地中海にある湾入で,イタリアとバルカン半島の間に位置する。最奥部のベネチア湾から南東方向に広がり,湾頭部のオトラント海峡までの延長は約 800km。湾の幅は 100~200km前後。最大水深は約 1260m。名は,かつてポー河口にあって繁栄した都市アドリアに由来する。現在のアドリア (ベネチア南西約 50km) は 22km内陸にある小さな都市。イタリア側の海岸は直線的で海岸平野が発達しているが,対岸のダルマチア海岸は多くの小湾と島々のある山がちの海岸。沿岸には自由港のトリエステをはじめ,ベネチア,バリ (イタリア) ,リエカ,スプリット,ドゥブロブニク (クロアチア) ,ドゥラス (アルバニア) などの諸港があり,沿岸諸地域にはもとより中央ヨーロッパや北イタリアにとっても海外へ通じる重要な通路となっている。沿岸の気候は地中海型で夏は海水浴地,冬は避寒地となる。海と海岸の風景は美しく,観光客が多い。特にダルマチア海岸は景観に富む。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「アドリア海」の解説

アドリア海(アドリアかい)
Adria

イタリアとバルカン半島にはさまれた地中海の一支海。その名はエトルスキが建てたとされる都市アドリアに由来。中・近世にヴェネツィアが制海権を独占。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアドリア海の言及

【地中海】より

…地質学的なタイム・スケールからみれば,ジブラルタル海峡は狭められつつあるということができる。現在の地中海のおよその輪郭は第三紀に形づくられ,アルプス造山運動による周辺山地の形成,アドリア海の形成,ギリシアと小アジアの間の沈降によるエーゲ海の形成などがこれに相当する。地中海地域各地に地震帯が多く,また火山活動が活発なのも,このような地質学的に最近の地殻運動を物語っている。…

※「アドリア海」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android