クルレジャ(その他表記)Miroslav Krleža

改訂新版 世界大百科事典 「クルレジャ」の意味・わかりやすい解説

クルレジャ
Miroslav Krleža
生没年:1893-1980

ユーゴスラビアの文学者。ザグレブの生れ。ブダペストのルドビツェウム軍事アカデミー卒業。1914年すでに詩人として出発したが,第1次大戦の過酷な体験を短編集《クロアチア軍神マルス》(1922)で告発し,大ロングセラーとなった。ユーゴ共産党創立以来の党員として1925年ソ連邦へ行き,翌年発表した旅行記には,レーニン亡き後の不吉なスターリン時代が予知されている。その後発表した長編《フィリップ・ラティノビッチの帰還》(1932)は,生の意味を求めて放浪する画家の苦悩を描いた傑作。戯曲では崩壊する貴族の一家を活写した《グレンバイ家の紳士たち》(1928)などの三部作で新時代を画した。またカイ方言を駆使した詩集《ペトリツァ・ケレンプフのバラード》(1936)も忘れてはならない。第2次大戦後は全5巻の大河小説《旗》(1967)を完成。戦前から多くの雑誌編集に携わったが,特に1950年以来百科事典研究所所長となり,8巻の《ユーゴスラビア百科事典》(1955-71)をはじめ種々の事典を手がけた。チトーのよき相談相手として,戦後のユーゴスラビア文学と文化の活性化に彼が果たした役割は絶大なものがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クルレジャ」の意味・わかりやすい解説

クルレジャ
Krleža, Miroslav

[生]1893.7.7. ザグレブ
[没]1981.12.29. ザグレブ
クロアチアの詩人,劇作家,小説家。現代クロアチアを代表する作家で,クロアチア文化の推進者。ブダペストの陸軍大学を卒業後,第1次世界大戦には一兵卒として参加し,この間に表現主義的手法による戯曲『伝説』 Legenda (1914) ,『ミケランジェロ・ブオナロッティ』 Michelangelo Buonarotti (19) ,詩集『パン』 Pan,『三つの交響楽』 Tri simfonije (17) などを発表。以後,詩,劇作,小説,評論の分野で精力的な活動を展開。代表作に,戦争の悲劇を描いた小説『クロアチアの神マルス』 Hrvatski bog Mars (22) ,ブルジョアジーの崩壊を描いた小説『フィリップ・ラティノビッチの帰還』 Povratak Filipa Latinovića (32) ,同じテーマの戯曲『ゴルゴタ』 Golgota (22) ,『グレンバイ家の人々』 Gospoda Glembajevi (28) など。ほかに多くの評論,旅行記がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クルレジャ」の意味・わかりやすい解説

クルレジャ
くるれじゃ
Miroslav Krleža
(1893―1981)

旧ユーゴスラビア、クロアチアの詩人、劇作家、小説家。ザグレブに生まれる。ブダペスト陸軍士官学校を卒業、第一次世界大戦にオーストリア・ハンガリー軍人として参加、戦後創作に専念。小説集『クロアチアのマルス神』(1922)および『千と一つの死』(1933)において、他国の利害のために戦わされるクロアチア民族の悲劇を描いた。一時期、表現主義に接近したが、1920年代末から30年代にかけて鋭敏な社会意識に基づくリアリズム作品煩悶(はんもん)』(1928)、『グレンバイ家の人々』(1929)、『フィリップ・ラティノビッチの帰還』(1932)などを発表し、クロアチアのブルジョア社会矛盾を描いた。

[栗原成郎]

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百科事典マイペディア 「クルレジャ」の意味・わかりやすい解説

クルレジャ

クロアチアの作家。旧ユーゴスラビア科学アカデミー副議長。小説《フィリップ・ラティノビチの帰還》(1932年),戯曲《グレンバイ家の人びと》《ブリトバの祝宴》や詩集など多くの作品があり,社会批判が基調となっている。

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世界大百科事典(旧版)内のクルレジャの言及

【ユーゴスラビア】より

…また言語の統一とともに各民族間の文学交流が生まれた。とくに20世紀に入ってから,アンドリッチらが編集した《南方文芸》(1918-19)にツァンカルクルレジャらも寄稿して,南スラブ諸族の文化的・文学的な協働が始まった。 20世紀に入って1918年には南スラブ諸族の統一国家ユーゴスラビアが成立するが,この20世紀の文学はスロベニアのモダニズム運動で幕をあける。…

※「クルレジャ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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