レンズ、反射鏡、プリズム、回折格子などの光学素子を使って、主として可視光領域で使用する機械器具をいう。多くの種類があるが次のように分類できる。
(1)結像光学機器 物体の像をつくり、これを目で観察したり、写真フィルムに記録したりするのに用いられる。もっとも簡単なものは拡大鏡(虫めがね)であって、1枚の凸レンズでの焦点、または焦点より少し内側に物体を置いて拡大した虚像を目で観察する。顕微鏡は、微小なものを大きく拡大するのに用いられ、焦点距離の短い対物レンズで物体の拡大実像をつくり、これを接眼レンズで拡大して見る。照明装置と集光レンズが付属している。望遠鏡は、遠方の物体を拡大して見るために用いられ、焦点距離の長い対物レンズで遠方の物体の実像をつくり、これを接眼レンズで拡大して見るようになっている。大口径の対物レンズが必要な場合には、凹面鏡を用いることが多い。カメラは物体の像をフィルムに記録するための器具であって、暗箱中に置いたフィルム上にレンズで物体の像をつくる。レンズには像の明るさを調節するための絞りと短い時間だけ光を通すためのシャッターがついている。投影機は、映画やスライドまたは小形の機械部品などを拡大してスクリーンに投影するために用いられ、明るい光源と集光レンズ、および投影レンズで構成されている。これらの結像光学器械はいずれも長い歴史をもち、光学の応用の上に重要な役割を果たしてきた。1990年代になるとエレクトロニクスと組み合わされ、多くの新しい用途に使われ始めた。たとえば、フィルムのかわりに半導体のCCD(電荷結合素子)を用いるデジタルカメラは、従来のフィルムを使うカメラを凌駕(りょうが)する勢いで普及が進んでいる。
(2)計測光学機器 計測を目的にしてつくられた光学機器であって、干渉計が代表的なものである。干渉計は光波を干渉させる装置であって、光源から出た光を半透明鏡などで二分し、それぞれ鏡で反射させてからふたたび重ね合わせて干渉させて生じる干渉縞(じま)を観察するようになっている。一方の鏡の移動によって生じる干渉縞の移動を数えて長さの測定を行うマイケルソン干渉計、干渉縞の曲り方から一方の鏡の平面度を測定するトワイマン干渉計、風洞内の気流の流れの測定に用いられるマッハ‐ツェンダー干渉計などがある。1980年ごろから光源にレーザーを使うことが多くなり、また干渉縞の測定に計算機を使うようになって、干渉計の用途は飛躍的に増大している。その他、微小な長さを測定する、測定用顕微鏡も多く使われている。
(3)分析光学機器 光を使って分析を行う機器で、代表的な機器は、分光器である。分光器は光を波長成分に分解して、その組成を調べる器械であって、プリズム分光器、回折格子分光器および干渉分光器がある。プリズム分光器は、プリズムに入射した光が波長によって屈折角が変わる現象を利用した分光器である。回折格子分光器は、きわめて狭いスリットを多数配列した回折格子が、波長によって回折した光の方向を変えることを利用したものであって、反射型の回折格子をつくることもできるため、可視光だけでなく紫外線、赤外線などの光に対しても使われている。干渉分光器は、干渉縞のでき方が波長によって異なることを利用してつくった分光器であって、直接分光スペクトルを得ることはできないが、計算機の使用によって高分解能の分光が可能である。1980年ごろからは計算機の使用が容易になったため、多く使われるようになった。
(4)情報光学機器 事務用や情報処理用の光学機器であって、多くの種類があり、オフィスで使われるものが多い。ファクシミリは、原稿に光を当て、その反射光を測定して濃淡信号をつくり、電話線を使って送信したり、その信号を受信して濃淡信号をプリントする機器である。コピー機(複写機)は原稿の濃淡を感光ドラムに記録し、それをトナーを用いて紙に転写する。レーザープリンターはレーザー光をコンピュータの出力信号で変調し、それを感光ドラムに記録してからコピー機と同様に紙に転写する。バーコードリーダーは、レーザー光でバーコードパターンを走査し、その反射光を測定してバーコードを高速で読みとる装置で、スーパーマーケットなどでおなじみである。
(5)医用光学機器 医学用に使われる特殊な光学機器であって、結像光学機器の一種と考えてもよい。内視鏡は体内に挿入して内部の像を外から観察する機器で、小型のレンズに照明器具をつけ、像は光ファイバー束で伝送され観察・撮影を行う。組織の一部を切り取ったり、簡単な手術をする器具を備えていることが多い。1990年ごろからは、超小型のCCDカメラを使い画像を電気信号で取り出すものが増えている。眼底カメラは網膜の像を観察・撮影する器具で、網膜観察のための特殊な光学系を備えている。その他、眼圧計、眼底血流計など眼科関係の機器が多い。
(6)レーザー加工機器 レーザービームをレンズなどで収束してつくった微小なスポットの高熱を利用した加工用の機器であって、従来は光学機器として分類されなかったが、1990年ごろから種類が増え、用途も広まったので、光学機器として考えられるようになった。外科手術に使われるレーザーメス、縫製工業で使われる布地の裁断機、電子工業で使われる半導体や電子部品の加工用機器、重工業で使われる金属材料の切断、溶接などに使われる機器など多くの種類があり、多方面で使われるようになってきた。
[辻内順平]
『日本光学測定機工業会編『実用光キーワード事典』(1999・朝倉書店)』▽『吉田正太郎著『光学機器大全』(2000・誠文堂新光社)』▽『辻内順平・黒田和男ほか編『最新光学技術ハンドブック』(2002・朝倉書店)』▽『日本規格協会編・刊『JISハンドブック24 光学機器』2003年版(2003)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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