改訂新版 世界大百科事典 「シャーバン」の意味・わかりやすい解説
シャーバン
Shaaban bin Robert
生没年:1909-62
タンザニアの詩人,作家。全作品をスワヒリ語で発表,古典期スワヒリ詩の伝統をくむ多数の詩編のほか,小説,エッセー,伝記,自伝の分野を開拓,現代スワヒリ文学の創始者となった。ヤオ族の出身であるが,代々スワヒリを名のるイスラム教徒で,作品には信仰,愛,忍耐,努力などイスラム的倫理価値が濃い。ダル・エス・サラームで勉学後,1930年ころから地元新聞に詩を投稿し始め,没年までに詩集または詩とエッセーの雑集14冊,中編小説5冊,伝記1冊,自伝2冊を出した。詩が本領で,スワヒリ語の桂冠詩人,アフリカのシェークスピアともうたわれ,タンザニアの国宝的存在であった。処女詩集《言葉の飾り》(1948),第2次大戦の叙事詩《自由の戦いの歌》(3000連。1967)ほか,スワヒリ語訳《ルバーイヤート》がある。現代君主論ともいうべき寓話小説《クサディキカ--大空の国》(1951),女性歌手の生涯を描く《シティ・ビンティ・サード伝》(1958)は傑作とされる。60年,アフリカ人作家の最高の名誉といわれるマーガレット・ロング記念メダルを受けた。
執筆者:宮本 正興
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報