日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュテルマー」の意味・わかりやすい解説
シュテルマー
しゅてるまー
Horst L. Störmer
(1949― )
ドイツの実験物理学者。フランクフルト生まれ。ゲーテ大学を卒業後、ドイツのマックス・プランク研究所がフランスの国立科学研究センターと共同で運営する、グルノーブルの強磁場研究所で研究を開始。1977年にシュトゥットガルト大学の博士号を取得し、同年アメリカのベル研究所に就職。すでにベル研究所で名声をはせていたD・ツイとともに、1982年に「分数量子ホール効果」という現象を実験で発見した。半導体を絶対零度(-273.15℃)近くに冷やし強い磁場をかけると、電流の流れと直角の方向に特殊な抵抗が生まれる。この抵抗値はとびとびの値になり、「整数量子ホール効果」とよばれる。この現象を1980年に発見したK・クリッツィングは1985年にノーベル物理学賞を受賞している。しかしツイとの実験では、クリッツィングがみつけたとびとびの値以外にも抵抗が現れることを示した。1991年、ベル研究所の物理学研究所の所長。1998年にコロンビア大学教授となる。分数量子ホール効果を共同で発見したツイ、この現象を理論的に解明したR・ラフリンとともに、1998年のノーベル物理学賞を受賞した。
[馬場錬成]