つい(読み)ツイ

デジタル大辞泉 「つい」の意味・読み・例文・類語

つい[副]

[副]
そのつもりがないのにしてしまうさま。うっかり。思わず知らず。「つい話し込んでしまった」
そのつもりがあるのに、そのまましないでいるさま。「つい言いそびれてしまった」
時間距離などがごくわずかであるさま。ほんの。すぐ。「ついさっき電話があった」「つい目と鼻の先に住んでいる」
[類語]はしなくもゆくりなくあいにく折あしく折もあろうにはしなく思わず思わず知らずうっかり知らず知らず無意識ひょっと覚えず我知らず何気無しついつい我にもなくうかうかうかと不覚不用意不意ふと思いがけずふいとひょっこり打ち付けぶっつけにわか出し抜け突然唐突短兵急急遽きゅうきょ忽然こつぜん俄然突如いきなりふっとついとつとひょいはた図らずやにわに時ならずたちま卒然突発的発作的反射的やぶから棒青天の霹靂へきれき寝耳に水図らずも無意識的鈍感鈍いうかつ無自覚無感覚無責任無神経不注意散漫ぬかり手落ち手抜かりそつ手抜き遺漏疎漏抜かるノーマーク潜在意識無意思いも寄らない予想外意想外ひょんな

つい[接頭]

[接頭]《動詞「つ(突)く」の連用形のイ音便形から》動詞の連用形に付いて、その動詞の表す動作作用を強める意を表す。「ついくぐる」「ついつくばう」
「手づから―さして、錠強くさしていぬ」〈落窪・一〉

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精選版 日本国語大辞典 「つい」の意味・読み・例文・類語

つい

  1. 〘 副詞 〙 ( 接頭語「つい」と同語源か )
  2. 時間、距離、数量などが、ほんのわずかであるさまを表わす語。すぐ。じきに。簡単に。ちょっと。「ついさっき」「つい鼻の先」など。
    1. [初出の実例]「三吉野の頼もし金(がね)をつい取り返へす」(出典:仮名草子仁勢物語(1639‐40頃)上)
    2. 「ツイ弐歩つつ貰ても五人あれは弐両弐歩有」(出典:洒落本・粋好伝夢枕(1829))
    3. 「つい此の間も見た事があった」(出典:母を恋ふる記(1919)〈谷崎潤一郎〉)
  3. 意図しないでそうなってしまうさま、不本意ながらその動作をしてしまうさまを表わす語。うっかり。思わず知らず。何の気なしに。
    1. [初出の実例]「法の場にやこけのはへたる ひさしくてせめぬる駒はついすべり〈貞徳〉」(出典:俳諧・新続犬筑波集(1660)一〇)
    2. 「源ちゃん昨夕は━つい忙がしかったもんだから」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)

つい

  1. 〘 接頭語 〙 ( 動詞「つく(突)」の連用形「つき」の変化したもの ) 下に続く動詞の表わす動作を強めたり、瞬間性を強調したりするのに用いる。
    1. [初出の実例]「手づからついさして、錠強くさしていぬ」(出典:落窪物語(10C後)一)
    2. 「あがる矢をばつゐくぐり、さがる矢をばおどりこえ」(出典:平家物語(13C前)四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「つい」の意味・わかりやすい解説

ツイ
つい
Daniel C. Tsui
(1939― )

アメリカの実験物理学者。中国のヘナン生まれ。高校時代を香港(ホンコン)で過ごし、1958年にアメリカに渡ってイリノイ州のオーガスタナ大学に入学。卒業してシカゴ大学で大学院生として研究を続け、1967年に博士号を取得。1968年に半導体物理研究の中心であるベル研究所に職を得て、他人が手をつけない分野を探して研究を進める。1981年の秋から1982年にかけて、同じベル研究所にいたH・シュテルマーと、半導体を絶対零度(-273.15℃)近くに冷やして強い磁場をかけたときに、電流の流れと直角の方向に電気抵抗が現れる現象を研究した。これについては、抵抗値がとびとびの値でしか現れない「整数量子ホール効果」をK・クリッツィングが1980年に発見、それにより1985年にノーベル物理学賞受賞していた。しかしシュテルマーとの実験で、クリッツィングの値以外にも抵抗が現れる「分数量子ホール効果」を確認した。その直後の1982年2月にプリンストン大学に移籍。分数量子ホール効果をいっしょに発見したシュテルマー、この現象を理論的に解明したR・ラフリンとともに1998年のノーベル物理学賞を受賞した。

[馬場錬成]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「つい」の意味・わかりやすい解説

ツイ
Tsui, Daniel C.

[生]1939.2.28. 河南
中国生れのアメリカの物理学者。 1967年シカゴ大学より博士号を取得。 82年よりプリンストン大学教授。 1980年代に K.クリッツィングが大きく発展させた量子ホール効果について,H.L.シュテルマーとともに実験を重ね,82年,低温・強磁場においてはクリッツィングが発見したものよりさらに多い階段が存在することを発見した。電子が3分の1,5分の1などの半端な電荷をもつ不思議な「ずれ」については,1年後の 83年,R.B.ラフリンにより,電子が半端な電荷をもつ準粒子としてふるまいうる「量子流体」の状態になったからであるとの理論的説明が与えられた。物質の一般的な内部構造や動力学に新たな理論的概念をもたらしたとして,98年シュテルマー,ラフリンとともにノーベル物理学賞を受賞。

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