改訂新版 世界大百科事典 「シュピーリ」の意味・わかりやすい解説
シュピーリ
Johanna Spyri
生没年:1827-1901
スイスの児童文学者。日本ではスピリとも。チューリヒ湖の南岸に近い山村ヒルツェルに生まれ,父は医師。1841年にチューリヒに出て,教師になるためにフランス語とピアノを学ぶかたわら,ホメロス,レッシング,ゲーテ,ドロステ・ヒュルスホフの作品を愛読した。詩人のC.F.マイヤーは少女時代からの知人。1852年に兄の親友の弁護士ベルンハルト・シュピーリと結婚,夫は市の法律顧問をへて,68年にチューリヒ市の官房長に就任。ヨハンナは普仏戦争のとき,スイスの婦人たちの赤十字活動を援助するため,匿名で小説を出版,これが契機となって児童文学を書きはじめた。初期の短編には主人公が貧窮の中で死んでゆく悲しい物語が多かったが,中期以降のほとんどの作品は,主人公の信仰心と人間愛が報いられるという幸福な結末になっている。それは19世紀の後半から繁栄に向かいはじめたスイスの現実の反映といえよう。代表作《ハイジ(アルプスの少女)》(1880-81)は,世界各国語に翻訳され,映画化,アニメーション化されて今日でも世界中の子どもたちに愛されている。
執筆者:増田 義男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報