シリス(読み)しりす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シリス」の意味・わかりやすい解説

シリス
しりす

環形動物門多毛綱シリス科Syllidaeに属する海産動物の総称海底の砂泥中、海藻の根部の間、各種の付着動物、あるいはカイメンの体の中などで生活している。一般に小形で、体長1~2センチメートル、体幅1ミリメートルほどのものが多いが、エキオゴニナ亜科Exogoninaeの種類では体長2~3ミリメートル、体幅0.4~0.5ミリメートルで、腹面に多くの卵をつけて保育するものもいる。日本には20属、77種と7亜種が明らかにされている。

 体は円筒状か扁平(へんぺい)で、24~180剛毛節からなる。前口葉は一般に球形、半球形または四角形で、4個の目と3本の前感触手がある。消化管の前端の形態は属によって異なり、アウトリタス属Autolytusではキチン質の歯が規則的または不規則に環状に配列していて、種の系統的特徴を示している。各体節両側にいぼ足があり、1本の背触糸をもつ。生殖法には有性生殖と無性生殖とがある。有性生殖では生殖時期になると、雌雄個体外形が著しく変化し、夜間に多数の個体が生殖群泳を行って、放卵、放精する。無性生殖にはいろいろな方法がみられる。親の体上の1体節が頭部に変形し、その後ろの部分とともに親から離れて1個体になる。また、親の体の後部から多くの芽が生じ、それぞれ幼虫になって房のようになり、ある程度大きくなって親から離れる。また、極端な場合ではカラクサシリスのように、親の体から出芽した幼虫が親から離れずに成長するので、体が網のようになっている。

 個体数が多いので、自然界では食物連鎖上、食われるものとして、重要な位置を占めているものと考えられる。

[今島 実]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例