改訂新版 世界大百科事典 「シリス」の意味・わかりやすい解説
シリス
syllis
多毛綱シリス科Syllidaeに属する環形動物の総称。日本では84種が知られている。多毛類の中でも小型で,とくに有用種は見当たらないが,付着生物のコケムシ,ハイドロゾア,ホヤなどの群落中や海底の泥中にかなりの個体数がすんでいるので,自然界では食物連鎖上,重要な位置を占めるものと考えられる。
体長は小型の種類では2~3mm,大型な種類で60mmになる。体は大部分が背腹にやや扁平な円筒状であるが,なかには板状に扁平なものもある。前口葉は一般に球形で4個の眼点と3本の前感触手がある。各環節の両側から剛毛束をもったいぼ足と背触糸がでるが,それらの形態は種によって異なっている。消化器で口に続く吻(ふん)の先端部にはキチン質の1個の中央歯,または多くの歯が規則的に,または不規則に並んで歯冠をつくっている。とくにAutolytus属ではこの歯冠の形態に系統的な特徴が見られる。雌雄異体で生殖法には有性生殖と無性生殖とがある。有性生殖では生殖期になると雌雄の体型がかわり,水面付近で生殖群泳を行う。無性生殖では,体の一体節が頭部にかわり,やがて親から離れて独立したり,親の体後部の一つの場所から多くの尾部をバナナの房状に出し,だんだん大きくなってやがて頭部ができると親から離れる。分布はかなり広いようで,浦賀水道から初めて報告された種類が北アメリカの大西洋岸からも採集されている。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報