日本大百科全書(ニッポニカ) 「しろわけ」の意味・わかりやすい解説
しろわけ
しろわけ / 代分
漁獲物を分配する慣行の一つ。漁獲量がどれだけかわからない海中での自然採取が主であるため、あらかじめ舟、漁具、労働を提供した1人前の労力、運営や漁労作業に重要な役割をもつものなどにどれだけ配当するという割合を定めておいて、それによって漁獲収益を分配するしろわけ制が行われてきたと考えられ、近代以前、賃金以前の遺風でもあった。しろ(代)とは1人前の漁獲配当高をいう。
しろわけの計算で船代(ふねしろ)、網代(あみしろ)、乗り代(のりしろ)を算出するのに、漁獲高より、大仲(おおなか)また雑用(ぞうよう)という共同の経費を天引きして、それから割り当てる慣習が行われてきた。この大仲の経費は網主・網子の古い共同関係のあることを思わせる民俗かもしれない。単に乗り代などとよばれた労働に対する配当が、割合だけで決められたものではなく、いろいろな漁村にある神社や寺院に対する配当も考慮して行われた例が多い。また漁獲に大きな労力を担う若者組にも、濡れ代(ぬれしろ)と称するような配当を与える例もあり、漁村の労働の特色を示している。
[小川 博]