ジェー条約(読み)ジェーじょうやく(その他表記)Jay's Treaty

改訂新版 世界大百科事典 「ジェー条約」の意味・わかりやすい解説

ジェー条約 (ジェーじょうやく)
Jay's Treaty

1794年11月に調印された英米間の条約。アメリカ側全権ジョン・ジェーの名をとってアメリカではこの名で呼ばれる。1783年の講和条約でイギリスはアメリカの独立を認めたが,アメリカとの通商条約は結ばず,一方的に両国通商を規制し,またアメリカの領土と認められた地域の北西部に砦を保持し続け,アメリカ人の反感を買っていた。それに加えて,93年にフランス革命をめぐる戦争にイギリスが加わると,イギリス海軍はアメリカのフランスとの貿易を妨害したため,アメリカ国内では反英感情が高まった。対英戦争を好まないハミルトン財務長官はワシントン大統領に進言し,両国間の諸問題解決のためジェーを特使としてイギリスに派遣させた。イギリスも対米戦争を望まず,アメリカ領内の砦の撤去,アメリカ海運に与えた損害の補償,小型アメリカ船のイギリス領西インドへの入港などで譲歩した。しかし,この条約は中立国の貿易上の権利についてのアメリカの主張を認めず,イギリス領西インドへのアメリカ船の入港も制限付きであり,一方でアメリカはイギリスに最恵国特権を認めたので,アメリカ国内では評判が悪く,かろうじて上院で承認された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジェー条約」の意味・わかりやすい解説

ジェー条約
ジェーじょうやく
Jay Treaty

1794年9月イギリス外相 W.グレンビルと,アメリカ代表の特別使節 J.ジェーとの間で両国の懸案を解決するために締結された条約。ジェイ条約とも表記される。 G.ワシントン大統領はイギリスとの紛争が起ることを懸念してジェーをロンドンに派遣し,この条約を結ばせたが,その結果国内に政治的紛糾を巻起した。条約の内容は (1) ミシシッピ川を両国に開放。 (2) 合衆国領海での,イギリスの敵対国私掠船に対する補給の禁止。 (3) 独立戦争以前の,イギリス商人に対するアメリカ人の負債の支払い。 (4) 合衆国とイギリス領北アメリカの境界を決定する委員会の設立。 (5) 西インド貿易の規制。全体にイギリスに有利な条約であり,アメリカでは各地域各層の反対が強かった。特に南部プランター (大農場主) は (3) を不満とし,独立戦争後イギリス軍が撤退時に同伴した逃亡黒人奴隷の補償問題を持出すなど激しく反対した。「イギリスの敵国」であるフランスも同条約を 78年の通商条約に違反するものであるとして反発し,98年から 1800年にわたり,フランス海軍はアメリカ沿岸に攻撃を加えた。

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