日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジオノ」の意味・わかりやすい解説
ジオノ
じおの
Jean Giono
(1895―1970)
フランスの小説家。南フランス、マノスクの貧しい家庭に育つ。1929年『丘』Collineによって文壇に登場して、あわせて三部作をなす『ボーミューニュの男』(1929)、『二番草』(1930)をはじめ続々と作品を発表。南フランスの自然と一体になった人々の厳しくもまた激しい生活を叙情的な文体で描き出す大地の作家として地歩を得た。ほかに『世界の歌』Le Chant du monde(1934)、『わが喜びの永遠に』Que ma joie demeure(1935)、『山中の戦い』(1937)などがある。しかし、『服従拒否』(1937)にみられる平和主義から、1939年、第二次世界大戦での動員令に応ぜず投獄され、戦後は対独協力容認者としてふたたび投獄されるなど不運が続いたが、執筆は続けられ、『屋根の上の軽騎兵』Le Hussard sur le toit(1951)によって、かつての叙情の奔出にかわる小説的構築と人間表情の精緻(せいち)さにみごとな達成を示して再度注目を集めた。生涯そこに生き続けた南フランスの大地とその作品は深く結び付いているが、単なる地方主義にとどまらず、大地に根ざし、これと闘いながらこれを愛する人々を共感をもって描き、宇宙との合一をうたう独自の文明論が、そこには込められている。ほかに『イタリア紀行』(1953)、『スューズのいちはつ』L'Iris de Suze(1970)、死後刊行された遺作『脱走兵』Le Déserteur(1973)などがある。
[小林 茂]