鈴鹿王(読み)すずかおう

改訂新版 世界大百科事典 「鈴鹿王」の意味・わかりやすい解説

鈴鹿王 (すずかおう)
生没年:?-745(天平17)

奈良時代政治家。高市皇子(天武天皇皇子)の次男長屋王の弟。710年(和銅3)無位より従四位下に叙せられた。このときに20歳に達したものと仮定すると,690年前後の誕生であろう。兄の長屋王は729年(天平1)の没時に46歳と伝えられるから684年の誕生で,ほぼ計算に合う。726年(神亀3)従四位上,728年ころ大蔵卿,729年兄長屋王の変に座したが,特赦された。730年正四位上,731年参議兼大蔵卿,732年従三位に叙せられた。735年知太政官事舎人親王が没し,その喪事を監護した。737年知太政官事に任ぜられ,大臣に準ずる待遇を受け745年没するまでその職にあった。737年は天然痘流行で多数の高官が死に,橘諸兄大納言,右大臣さらに左大臣として政権を握ったが,この間740年の藤原広嗣の乱から恭仁京遷都,紫香楽宮造営,大仏建立開始,難波京遷都,そして745年の平城京還都までの激動の時代に,橘政権の安定勢力として鈴鹿王の存在があった。
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朝日日本歴史人物事典 「鈴鹿王」の解説

鈴鹿王

没年:天平17.9.4(745.10.3)
生年:生年不詳
奈良時代の皇親高市皇子の子で,長屋王の弟。和銅3(710)年無位から従四位下に初めて叙され,神亀3(726)年従四位上に進み,5年ごろ大蔵卿。長屋王の変(729)に連座したが許され,翌年には正四位上に進み,天平3(731)年参議となり,4年には従三位。このような状況からすると,王は兄長屋王と母を異にし,また藤原不比等の4人の子(武智麻呂,房前,宇合,麻呂)とつながりが深かったとも憶測される。9年,猛威をふるった天然痘のため藤原4兄弟が相次いで死没したあとを受け,4人目の知太政官事となった。死去するまでその職にあったが,実権は同じ皇親出身の橘諸兄が握り,その地位も象徴的なものにすぎなかった。15年従二位に昇り,知太政官事兼式部卿従二位で死去。平城京にあった旧宅はのちに称徳天皇陵域に入ったと伝える。

(橋本義則)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鈴鹿王」の意味・わかりやすい解説

鈴鹿王
すずかおう
(?―745)

奈良時代の公卿(くぎょう)。高市(たけち)皇子の子。710年(和銅3)従四位下(じゅしいのげ)に昇叙。728年(神亀5)頃大蔵卿(おおくらきょう)。729年(天平1)兄の長屋王(ながやおう)の変に連座したが、勅により赦された。731年諸司の推挙により参議に進み、翌年従三位、737年には知太政官事(ちだいじょうかんじ)となり政界最高の地位に昇った。740~744年の難波(なにわ)、伊勢、紫香楽(しがらき)などへの行幸時に留守を務め、743年従二位。770年(宝亀1)旧宅を称徳天皇の山陵とするにあたり、子の豊野出雲(とよののいずも)らに位が授けられた。

[山本幸男]

『野村忠夫著『奈良朝の政治と藤原氏』(1995・吉川弘文館)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「鈴鹿王」の解説

鈴鹿王 すずかおう

?-745 奈良時代の公卿(くぎょう)。
天武(てんむ)天皇の孫。高市(たけちの)皇子の第2王子。神亀(じんき)6年兄の長屋王の変に連座したがゆるされ,天平(てんぴょう)3年参議,9年知太政官事(太政大臣に相当)となる。聖武天皇の行幸の際,しばしば恭仁宮(くにのみや)の留守をつとめた。15年従二位。天平17年9月4日死去。

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世界大百科事典(旧版)内の鈴鹿王の言及

【知太政官事】より

…8世紀前半期におかれた令外官。大宝令施行直後の703年(大宝3)に刑部(おさかべ)親王が任ぜられ,以後穂積(ほづみ)親王,舎人(とねり)親王をへて745年(天平17)に鈴鹿(すずか)王が没するまで,断続的に存在した。その職掌また令制官職・位階との相当関係も定かではなく,左右大臣等との関連も明らかではない。…

※「鈴鹿王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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