(読み)リョウ

デジタル大辞泉 「寮」の意味・読み・例文・類語

りょう〔レウ〕【寮】

学生・従業員などのための共同宿舎。「会社の
茶室としてつくった小さな建物数寄屋。また、その名目でつくった江戸の富裕町人の別宅下屋敷
律令制で、多くに属し、しきより下位より上位に位置する官司内蔵くら図書ずしょなど。
僧の住む寺内の建物。また、僧が寄宿して修学する道場
[類語]宿舎寄宿舎社宅飯場学寮下宿官邸官舎公邸公舎

りょう【寮】[漢字項目]

常用漢字] [音]リョウレウ)(呉)(漢) [訓]つかさ
役人のいる建物。また、同僚の役人。「寮属図書寮ずしょりょう
寄宿舎。「寮生寮母学寮入寮独身寮
数寄屋。茶室。「茶寮
[名のり]いえ・とも・まつ
難読主税寮ちからのつかさ

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精選版 日本国語大辞典 「寮」の意味・読み・例文・類語

りょうレウ【寮】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 役所。官司。特に、令制で、多く省に属し、職(しき)より下位、司(し)より上位に位置する官司。四等官として、頭(かみ)・助(すけ)・允(じょう)・属(さかん)を置く。允に大・少のあるものとないものによって、さらに二種に分けられる。この名称は明治以後の官制にも使用されたが、明治一八年(一八八五)の内閣制度実施以後は、宮内省の部局名としてのみ用いられ、昭和二四年(一九四九)に廃止された。
    1. [初出の実例]「太政官処分、造宮官准職、造大安薬師二寺官准寮、造塔丈六二官准司焉」(出典:続日本紀‐大宝元年(701)七月戊戌)
    2. [その他の文献]〔爾雅‐釈詁〕
  3. おもに禅宗で、僧の住む寺内の建物。また、その部屋。修行する堂とは区別された。寮舎。
    1. [初出の実例]「寺の寮々に各々塗籠をし」(出典:正法眼蔵随聞記(1235‐38)四)
    2. [その他の文献]〔陸游‐貧居詩〕
  4. 僧が寄宿して自宗の学業を修学する道場。室町時代末から江戸時代にかけて、多く一宗一派の宗徒を集めて入寮させたもの。談所(だんしょ)。談林。学林。学寮。
    1. [初出の実例]「ややはつ秋のやみあがりなる〈野水〉 つばくらもおほかた帰る寮の窓〈舟泉〉」(出典:俳諧・曠野(1689)員外)
  5. 部屋。居室。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  6. 江戸時代、幕府の学問所、藩の学校、私塾などで、学生が寄宿して学問する所。寄宿寮。居寮(きょりょう)。学問寮。学寮。
    1. [初出の実例]「居寮の事〈略〉其内一廉才学成就すれば、直に役儀を申付らるることもあり、〈略〉もし案外に進まぬ人は、一年にても寮を出さる」(出典:肥後物語(1781))
  7. 明治以降の学校や会社・商店などで、学生や従業員などのために設ける共同の宿舎。寄宿寮。
    1. [初出の実例]「寮(レウ)が同じで割りに親しかった」(出典:暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉三)
  8. 茶室。数寄屋(すきや)。茶寮(ちゃりょう)。また、茶室の名目で造った江戸の富裕町人の別宅や下屋敷。控えの家、隠居所、妾宅などに用いた。
    1. [初出の実例]「お染殿、お内がいかう取込みなら、病気の中は山家屋の根岸の寮へ出養生」(出典:歌舞伎・お染久松色読販(1813)中幕)
  9. 遊女屋の別宅。かかえの遊女の療養・保養、また、遊芸のしこみなどの用にあてた。
    1. [初出の実例]「木で鼻こくる寮の看病」(出典:雑俳・俳諧觿‐六(1781))

寮の補助注記

歴史的かなづかいは「れう」としたが、室町時代以降の意味では古辞書などに多く「りやう」の表記が見られ、禅宗の寺では多く唐音で「りゃう」と発音されたらしい。

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普及版 字通 「寮」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 15画

[字音] リョウ(レウ)
[字訓] つかさ・やくにん

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 形声
声符は(りよう)。の初形はで、もと庭燎(にわび)をいう。庭燎を以て守る神聖な建物を寮といい、その職制にあるものを寮・僚という。金文の〔毛公鼎〕に「大寮」「事寮」があり、当時の官制は祭祀と行政の両系をなしていた。〔令(れいき)〕「用(もつ)て寮人に(きう)(食事を供する)せん」、〔令彝(れいい)〕「乃(なんぢ)の寮と乃の友事(友官)とを左右(補佐)せよ」、〔叔夷(しゆくいはく)〕「乃の友事と乃の(嫡)寮とを康(やす)んじ能(をさ)めよ」のように用いる。わが国の古い官制にも、図書寮雅楽寮のようにいう。

[訓義]
1. つかさ、やくにん、あいやく。
2. まど、こまど。
3. 字はまた僚と通用する。

[古辞書の訓]
名義抄〕寮 ツカサ・マド 〔字鏡集〕寮 マド・ツカサ・モロトモ

[語系]
寮ly・僚・燎liは声が近い。はもとに作り、庭燎の象、その建物を寮、庭燎の祭儀に与るものを寮・僚という。

[熟語]
寮位・寮廓・寮佐・寮司・寮人・寮属・寮棚・寮房・寮友・寮吏・寮亮
[下接語]
下寮・学寮・官寮・茶寮・山寮・新寮・禅寮・茅寮・草寮・窓寮・僧寮・同寮・百寮・賓寮

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「寮」の意味・わかりやすい解説


りょう

律令(りつりょう)官制において、省の被管(ひかん)として設けられた官司。官司としての格は、職(しき)と司(し)の間にあった。『日本書紀』によると、大宝(たいほう)令以前、天武(てんむ)朝(672~686)に「陰陽(おんよう)寮」「大学寮」、持統(じとう)朝(686~697)に「内蔵(くら)寮」などがみえるが、官制として整ったのは大宝令においてであろう。

 大宝令制の寮としては、中務(なかつかさ)省所管の左・右大舎人(おおとねり)、図書(ずしょ)、内蔵、縫殿(ぬいどの)、陰陽の6寮、式部省所管の大学、散位(さんに)の2寮、治部(じぶ)省所管の雅楽(うた)、玄蕃(げんば)の2寮、民部省所管の主計(かずえ)、主税(ちから)の2寮、宮内省所管の木工(もく)、大炊(おおい)、主殿(とのも)、典薬(てんやく)の4寮、および左・右馬(め)寮の合計18寮がある。職員はいずれも長官が頭(かみ)、次官が助(すけ)、判官が大・少允(じょう)または允、主典が大・少属(さかん)。このうち左・右大舎人、図書、大学、雅楽、玄蕃、主計、主税、大工(だいく)、左・右馬の11寮は、頭の相当位が従(じゅ)五位上(じょう)、判官が大・少允各1人で大寮であり、内蔵、縫殿、陰陽、散位、大炊、主殿、典薬の7寮は、頭の相当位が従五位下(げ)、判官が允1人で小寮である。

 ただし、内蔵寮と縫殿寮は、それぞれ808年(大同3)と799年(延暦18)に大寮となり、散位寮は896年(寛平8)に式部省に併合された。以上のほか令に規定のない寮として、701年(大宝1)に、伊勢(いせ)の斎王(さいおう)に奉仕するための斎宮(さいくう)司を改めて斎宮寮とし、728年(神亀5)に中務省の被管として内匠(たくみ)寮を置き、さらに808年同寮に画工(えたくみ)司と漆部(うるしべ)司を併合した。729年(天平1)治部省所管の諸陵(しょりょう)司を改めて諸陵寮とし、820年(弘仁11)清掃、鋪設(ふせつ)をつかさどる掃部(かにもり)司と内(うちの)掃部司を統合し、宮内省の被管として掃部寮を設置、896年に左・右兵庫(ひょうご)、造兵(ぞうへい)司、鼓吹(くすい)司を統合し、兵部省の被管として兵庫寮を設置した。これらのうち掃部寮のみが小寮で、他は大寮である。また707年(慶雲4)に天皇の側近警護のために授刀(じゅとう)舎人寮が設置されたが、同寮は728年設置の中衛(ちゅうえ)府に併合されたと考えられている。

[柳雄太郎]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「寮」の解説


りょう

大宝・養老令制の官司の等級の一つで,職(しき)につぐ格づけのもの。四等官の名称は順に頭(かみ)・助(すけ)・允(じょう)・属(さかん)。八省の被管として左右大舎人(おおとねり)寮・内蔵(くら)寮・大学寮・雅楽寮・主計寮・木工(もく)寮など多数存在し,このほかにも左右馬(さうめ)寮などがあり,令外官(りょうげのかん)の内匠(たくみ)寮もこれに準ずる。これらの諸寮は,官員の官位相当の高さにより,さらに2等級に分類でき,上の等級は大寮と称される。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「寮」の解説


りょう

律令官制において,八省管下の官庁
いずれの省にも属さない左右馬寮 (さうめりよう) ・左右兵庫寮などもあった。司・監・署よりも格は上で,職員は頭 (かみ) ・助 (すけ) ・允 (じよう) ・属 (さかん) の四等官。明治初年の太政官制にも工学寮などが設けられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「寮」の意味・わかりやすい解説

寮 (りょう)

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【寄宿舎】より

…遠隔地からの通学や通勤の不便を解消するため,または特別の集団訓練や集団的資質の形成のために,学校,企業体,団体などが学生,生徒,工員,社員などに提供する共同宿舎。寄宿寮,寮などとも呼ぶ。
【学校における寄宿舎】

[寄宿制学校]
 学校での寄宿舎の発足は,青年もしくは少年に一定期間もっぱら学習に従事させることと密接な関係をもっている。…

【寄合】より

…会所はしばしば村の鎮守の境内にあり,神前でものごとを決める伝統をうかがわせる。寄合と神仏の関係を示す会場としては東海地方の神社境内の庁屋(ちようや)や関東地方の寮(りよう)(仏堂)がある。また寺の本堂が使用されることも少なくなかった。…

※「寮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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