改訂新版 世界大百科事典 「ジョアン5世」の意味・わかりやすい解説
ジョアン[5世]
João Ⅴ
生没年:1689-1750
ポルトガル王。在位1706-50年。ペドロ2世の子。即位したとき,すでにポルトガルはスペイン継承戦争(1701-14)に巻き込まれていたが,1713年のユトレヒト条約によってブラジル・アマゾン地方の主権が認められ,翌年にはラ・プラタ地方のコロニア・ド・サクラメントをスペインから返還された。しかし,以後ヨーロッパ問題には介入せず,大西洋政策に専念した。その治世は文字どおりブラジルの黄金時代で,大量の金をはじめ熱帯植民地物産が本国に流入した。国王はこの富を背景にルイ14世流の絶対王政を敷き,教会に対する国家の自立を強めたが,治世の後半期には貴族の反乱,反ユダヤ人騒擾などの社会不安が高まり,晩年には重病を患ったため王権の弱体化を招いた。国王は文芸・科学を保護し,1720年には王立歴史アカデミーを創設した。また金泥木彫や化粧タイルなど,装飾美術を中心とするポルトガル独自のバロック文化が隆盛となり,それは宮廷のみならず地方にまで浸透した。
執筆者:金七 紀男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報