イーブリン(英語表記)John Evelyn

改訂新版 世界大百科事典 「イーブリン」の意味・わかりやすい解説

イーブリン
John Evelyn
生没年:1620-1706

イギリスの政治家,日記作家。ピューリタン革命頂点とする激動期に生き,一貫して王党派寄りの保守的立場に立ったが,行動人ではなく,むしろ富裕なジェントリーの趣味人の姿勢を貫いた。その《日記Diary》(遅れて1818出版。完本6巻は1955)は,S.ピープスのそれと並んでイギリス日記文学の双へきとたたえられるが,1641-1706年にわたる公私の生活を忠実に記録した,滋味あふれる名文である。革命期間の大半は大陸旅行に費やし,共和制時代は地方の所領で造園動植物に関する研究に没頭した。王政復古期に,内戦に荒廃したイギリスの森林を回復させる目的で世に問うた《森林学Sylva》(1664)は,科学的に有効な建策であり,17世紀後半からのイギリスの新しい思想風土を示している。ローヤル・ソサエティ発起人でもあったこの文人にふさわしい労作で,新国王チャールズ2世意向にもかなった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イーブリン」の意味・わかりやすい解説

イーブリン
Evelyn, John

[生]1620.10.31. サリーウォットン
[没]1706.2.21. サリー,ウォットン
イギリスの政治家,文学者。財産家に生れ,ミドル・テンプル法学院,オックスフォード大学に学ぶ。 1641年ヨーロッパ大陸を旅行,帰国後政府の役職につき,ロイヤル・ソサエティ役員もつとめた。『彫刻論』 Sculptura (1662) ,『林学研究』 Sylva (64) などの著書があり,フランスの建築書,造園書を翻訳し,外国種の樹木を移入したりした。今日彼が記憶されるのは,その『日記』 (1818刊) による。これは 31~1706年にわたり,当時のイギリスやヨーロッパ諸国の事情についての興味深い見聞,同時代人の性格や行動の鋭い観察を含み,貴重な資料を提供するもの。ほかにロンドン大気汚染とその対策を論じた『煤煙対策論』 Fumifugium (1661) がある。

イーブリン
Evelyn, Judith

[生]1913.3.20. サウスダコタ,セネカ
[没]1967.5.7. ニューヨーク
アメリカの女優。 15歳で初舞台を踏み,代表作にサスペンス劇『ガス燈』 Angel Street (1941) がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イーブリン」の意味・わかりやすい解説

イーブリン
いーぶりん
John Evelyn
(1620―1706)

イギリスの文人、イギリス学士院会員。その日記は、ピープスと並ぶ日記文学の双璧(そうへき)。チャールズ2世に重用され、隠退後は多彩な趣味に生きた。『煙の追放』(1661)は、ロンドンの煙を追放するための試案で、古銭学、造園、彫刻、貿易などにも優れた観察を示した。『日記』(1818没後刊)は、少年時代に暦の空所にメモをした習慣から生まれ、1640年から1706年までの詳細な記録である。

[樋渡雅弘]

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