スウォバツキ(英語表記)Juliusz Słowacki

改訂新版 世界大百科事典 「スウォバツキ」の意味・わかりやすい解説

スウォバツキ
Juliusz Słowacki
生没年:1809-49

ポーランドのロマン主義三大詩人の一人,ロマン主義劇の創始者。ミツキエビチより10歳若い世代に属し,行動と政治闘争を通して理想を実現しようとした前世代と異なり,当初からバイロン,シラー,スコットらの強い影響のもとに〈純粋詩〉を追究した。1831年,十一月蜂起の際〈国民政府〉使者としてロンドンに赴き,蜂起壊滅とともにパリに亡命した。そこで《詩集》3巻(1832-33)を発表したが,新しさがゆえに亡命社会の理解を得られず,ミツキエビチからは芸術に対するその審美的態度を非難された。その後の数年はパリを去ってスイス,イタリアに滞在し,この間ギリシア,エジプト,パレスティナを旅して視野を広めた。38年以後はパリに定住した。その詩は感受性と想像力に富み,抒情性とアイロニー,パロディに満ちている。民族受難叙事詩《アンヘリ》(1838),詩人としての成功をもたらした論争的叙事詩《ベニョフスキ》(1841),神秘思想に裏打ちされた《精霊王》(1845-48)などが有名。ポーランド象徴詩の先駆的作品とされる《精霊王》は新しい詩的形象によって,のちの〈若きポーランド〉に多大の影響を与えた。戯曲ではミツキエビチにみられる受難の賛美,個人主義的ヒロイズムを批判する悲劇《コルディアン》(1834),民間説話をもとに一大歴史神話をめざした悲劇《バラディナ》(1839),《リラ・ベネダ》(1840)などが代表作。音楽的・絵画的効果と生き生きした想像力にみちたけんらんたる悲劇《バラディナ》はポーランド・ロマン主義美学の最も完全な実現とされる。42年にトビアンスキの神秘的メシアニズムの影響を受けて以降,現実と夢,幻想が渾然となった多くの未完の作品を書いた。他に《パリ》《頌歌(しようか)》《アガメムノンの墓》など有名な抒情詩も数多く残した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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