改訂新版 世界大百科事典 「スタットハウデル」の意味・わかりやすい解説
スタットハウデル
Stadhouder
元来ネーデルラント各州の君主権代行職(州総督)。15世紀以降常設化され,行政長官と軍司令官を兼ねた。1581年フェリペ2世廃位とともに自然消滅すべきところ,その後も残されてオランダ共和国の国制上特殊な地位を占めた。形式上は主権者たる州議会により任命される一官吏にすぎないが,軍事・行政上広範な権限を保持し,しかも就任者がオラニエ=ナッサウ家の1人ないし2人に限られると,事実上州の枠を越えた連邦行政官,陸海軍最高司令官の資格を帯びた。ホラントのラートペンショナリスraadpensionaris(州議会法律顧問)が代表する州権主義の議会派に対抗して,中央集権志向の総督派を率い,両派の抗争が共和国の歴史を彩った。いわゆる〈無総督時代〉(1650-72,1702-47)もあったが,フレデリック・ヘンドリック,ウィレム2世ら有能な就任者の下では,その権限が強化された。しかし1795年共和国と運命を共にしてこの官職も消滅した。
執筆者:川口 博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報