日本大百科全書(ニッポニカ) 「スペシャル301条」の意味・わかりやすい解説
スペシャル301条
すぺしゃるさんびゃくいちじょう
Special 301 Provisions of the 1988 Omnibus Trade Act
アメリカで制定された「1988年包括通商・競争力法」の条項の一つ。知的財産権を侵害している国を特定し、その是正を求める。映画などの著作権、特許、商標など、アメリカ企業の知的財産権を十分に保護していない国に対し、制裁を振りかざしながら保護の強化を求めて交渉する。スーパー301条の知的財産権版といえる。
アメリカ通商代表部(USTR)が、毎年交渉を必要とする「優先交渉国」、厳しい監視が必要な「優先監視国」、一般的な注意を必要とする「監視国」を定め、優先交渉国とは交渉に入る。
この条項が発動された著名な例としては、アメリカが1994年に中国と始めた交渉がある。アメリカ製コンパクトディスク(CD)の海賊版が中国で大量につくられ、東南アジアから遠くはカナダにまで輸出されていることや、コンピュータソフトの複製づくりが横行していることが理由であった。交渉は難航し、95年には双方が制裁措置を発表するまでになったが、中国側の大幅譲歩により制裁措置は発動されることなく決着した。
日本は「優先監視国」や「監視国」に指定されたことはあるが、「交渉優先国」にされたことはない。
[岡田幹治]