スミレサイシン(読み)すみれさいしん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スミレサイシン」の意味・わかりやすい解説

スミレサイシン
すみれさいしん / 菫細辛
[学] Viola vaginata Maxim.

スミレ科(APG分類:スミレ科)の多年草。根茎は横にはい、分岐するものが多く、太く、密に節があり、節からやや太い根を下ろす。地上茎はなく、少数の葉が花より遅れて伸びる。葉身は普通は花の初めには巻いているが、のちに開き、三角状広披針(こうひしん)形、基部は心臓形先端は急に細くとがる。長さ5~10センチメートル、幅3~5センチメートルになるが、果実期にはさらに大きくなる。5月、高さ10センチメートルほどの柄の上に径2.5センチメートル以上になる淡紫色の花を横向きに開く。側弁内部は無毛で、下弁の距(きょ)は半円形で長さ4~5ミリメートルで太い。択捉(えとろふ)島、北海道南部、本州(おもに日本海側)の多雪地方の林下に生える。

[橋本 保 2020年7月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スミレサイシン」の意味・わかりやすい解説

スミレサイシン
Viola vaginata

スミレ科の多年草で日本に特産する。本州の中北部から北海道南部にかけての日本海側に分布し,太平洋側にあるナガバノスミレサイシンと対応関係にある。山地木陰や林床に生える。茎はすべて地下茎となり,長く横にはう。葉は花後に生長し,数枚が束生して長柄をもった長さ6~15cm,幅3~10cmの三角状卵形で,基部は心臓形をしている。葉質はやや厚く上面は無毛で縁に鋸歯がある。春に長い花柄を伸ばし,左右相称の淡紫色の大型花を1個ずつつける。和名は葉の形が漢方薬として有名な細辛 (ウマノスズクサ科のウスバサイシン ) に似ていることによる。ナガバノスミレサイシンは葉が長い三角形状で幅は狭い。

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