日本大百科全書(ニッポニカ) 「スルバラン」の意味・わかりやすい解説
スルバラン
するばらん
Francisco de Zurbarán
(1598―1664)
17世紀スペイン絵画の巨匠。バダホース県のフエンテ・デ・カントスに生まれ、マドリードで没。1629年にセビーリャ市の画家に任命され、生涯のほとんどをこのアンダルシア地方の州都を中心に活躍、主として諸修道会のために宗教画、とくに修道会の歴史、修道士や聖人の生涯、苦行者や神秘家などを数多く描いた。そのじみな構図、虚飾のないリアリズム、明確な輪郭と緻密(ちみつ)な面によるボリューム表現、明るい色調と画面全体にみなぎる黄金色を特徴とした明暗法による静謐(せいひつ)な宗教画は、当時のスペインを支配していた対抗宗教改革運動の精神、とくにその神秘主義と克己の気風をみごとに反映している。わずかながら、独創的な「ボデゴーン(静物画)」や肖像画も残した。代表作に『聖トマス・アクィナスの礼讃(れいさん)』(1631)、グアダルーペ修道院シリーズ(1638~39)、ヘレースのカルトゥジオ会修道院シリーズ(同上)などがある。
[神吉敬三]