改訂新版 世界大百科事典 「スワデーシー」の意味・わかりやすい解説
スワデーシー
Swadeshī
本来インド諸語で〈自己の所属する地の〉〈自国の〉を意味する形容詞であるが,転じて土着の商品の生産と愛用奨励の意で用いられる。古くは1860,70年代の西部インド,マハーラーシュトラ地方で,土着産業の推進を目指す運動がスワデーシーの名の下で展開されたが,一般にインド史では,1905年のイギリス植民地当局によるベンガル分割への反対を契機として08年まで行われた広範な民族運動の一形態を指すのが普通である。インド人資本による産業(主として繊維工業)の発展と外国(特にイギリス)商品のボイコットを含むインド国産品の愛用奨励が運動のおもな内容であるが,ベンガルでは広く社会・文化運動にも波及した。1906年の国民会議派カルカッタ大会では初めて民族独立を意味するスワラージのスローガンが叫ばれ,そのための手段として民族教育などとともにスワデーシーの課題が掲げられた。ティラク,パール,ラージパット・ラーイら急進的民族派指導者の下で,この大衆的戦術によってベンガル地方のみならず,全インドの知識人,中間階層および一般大衆が政治運動の中に結集されていく。この運動はボンベイやカルカッタのインド民族資本の成長に少なからず寄与した。また,20年代にはガンディーもカーディー(手織綿布)やチャルカーを奨励し,このスワデーシー運動を非暴力抵抗闘争の一つの重要な柱とした。
執筆者:内藤 雅雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報