インドの思想家、独立運動の指導者。マラータ州のプーナ(現、プネー)に生まれる。21歳でデカン・カレッジを卒業後、1880年私立高校を創設して、教育活動に従事。また、英語紙『マハラッタ』とマラーティー語紙『ケーサリ(獅子(しし))』を創刊し、インドの伝統を強調し、民族独立運動の論陣を張った。一方、彼は学者であって、古代バラモン哲学に関する数多くの論文を発表し、また『バガバッド・ギーター』に対する注釈書を刊行した。このような学究活動を媒介にして、過激な政治思想と民族意識を身につけ、イギリスのインド支配を攻撃し、スワラージ(独立)は民族の生得の権利であると主張するに至った。1895年に、マラータ王国の英雄シバージーの200年祭で彼が行った演説は、多くの青年たちを反英独立闘争に参加させる契機となった。ついで1905年に始まるベンガル分割法をめぐる反英闘争においては、過激派の指導者として活躍し、ゴーカレーらの穏健派の指導者と鋭く対立した。1908年、この反英闘争によって逮捕され、6年間の禁錮(きんこ)刑を科せられてビルマ(現、ミャンマー)のマンダレーに流刑となった。1914年に出獄、そして1916年には自治連盟を結成し、独立運動を続けた。彼の死後、その運動を継承したのはインド独立の父M・K・ガンディーであった。著書に『ギーター・ラハスヤ』がある。
[増原良彦]
近代インドの政治家,思想家。西部インドのマハーラーシュトラ州,プネー(プーナ)出身。教育者として出発したあと,20世紀初頭のインド民族運動の中で急進的民族派グループの最大の指導者となる。その主宰する新聞《ケーサリー》と《マラーターMarāthā》はインドの代表的民族紙として反英闘争の強力な武器となる。スワラージ(独立)こそ民族の生得の権利であり,これの獲得は義務であるとの思想をインド人民の心に焼きつけ,スワデーシー(民族産業奨励),イギリス商品排斥,民族教育を掲げて運動を展開。1908-14年は〈暴動教唆〉を問われてビルマ(現ミャンマー)で獄中生活を送った。釈放後,自治要求運動を指導。18-19年渡英し,イギリス世論にインド自治要求を訴え,またベルサイユ平和会議の議長クレマンソーにもこれを訴えかけている。第1次大戦期から労働組合運動の推進につとめ,全インド労働組合会議の結成(1920)にも関連。主著に《ギーター・ラハスヤGītā-Rahasya(ギーター奥義)》(1915)がある。
執筆者:内藤 雅雄
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1856~1920
インドの政治家。現マハーラーシュトラ州の出身。ローカマーンニャ(人々に慕われる人)とも呼ばれた。プネーで教育を受けたのち,教育活動やジャーナリズムに携わった。彼の主宰した新聞『ケーサリー』『マラーター』は,反英運動に大きな影響を与えている。さらに大衆運動を指導し,外国製品ボイコット,スワデーシー,スワラージ,民族教育などを主張した。インド国民会議派においては急進派の代表であった。晩年にはベサントとともに自治運動を展開した。
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…ケーサリーは〈獅子〉を意味する。デカン教育協会を設立し,プネー(プーナ)市を中心に民族教育普及につとめていたV.チプルンカル,ティラク,G.アーガルカルらは1881年1月に英字紙《マラーター》とこの《ケーサリー》の発刊に踏み切る。両者は特にティラクの主宰下で,19世紀末から20世紀初頭に急進的民族主義思想を掲げるオピニオン・リーダーとして世論を喚起した。…
…しかし近現代インド史では一般に〈民族の(政治的)独立〉を意味するといってよい。1905年から始まるベンガル分割反対闘争の中でマハーラーシュトラのティラクがスワラージのスローガンを打ち出し,外国商品ボイコット,インド産業の発展奨励をうたうスワデーシーおよび民族教育をその目的達成のための具体的活動プログラムとした。このプログラムは06年の国民会議派カルカッタ大会で議長ダーダーバーイー・ナオロージーによって提起され,採択された。…
…また寺院に参拝したときに,バラモン僧が祝福の印としてクンクムをつけてくれることがある。また男性はビャクダンまたはサフランの粉末を油で練って,煤を混ぜて黒色にしたティラクと称する印を額に付けることもある。伝統的には,とくにバラモンの高僧に会うときには,男子はドーティと称するインド服を,女子は1枚の縫目の無い布から作られたサリーを着用する。…
※「ティラク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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