日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボイコット」の意味・わかりやすい解説
ボイコット
ぼいこっと
boycott
ボイコットの用語は、1870年代末のアイルランドで、土地管理人ボイコット大尉の悪政に対して小作人が組織的に行った絶交に由来する。国際法上、ある国の国民が組織的、集団的に特定の国の商品の不買をなし、取引を断絶すること。このような不買が、各人の個々の自発的意思に基づく限りは、規模のいかんにかかわりなく、国際法上の問題は生じない。しかし、国家が不買を指導・推進した場合、または、国民の一部が他の国民を暴行や脅迫によって不買を強制するのを国家が故意または過失によって防止しなかった場合には、国際責任が成立する。ただし、相手国の違法行為に対抗するための手段として用いられる場合には復仇(ふっきゅう)として、また、集団安全保障体制の下における非軍事的強制措置としてなされる場合(国連憲章41条)、違法性が阻却される。国際的ボイコットは、国民的または民族的闘争の武器として用いられるものであるが、18世紀のアメリカ独立戦争前の英貨排斥運動にその萌芽(ほうが)をみることができ、20世紀に一般的となった。中国において五・四運動(1919)以降全国規模でなされた日貨排斥・英貨排斥運動は史上最大といわれる。また、対敵通商法に基づくアメリカの対北朝鮮、ベトナム、キューバ措置や、複数の国が強調して行う場合もみられる。
[広部和也]
争議行為としてのボイコット
使用者に対して経済的圧力を加えることを目的とし、使用者の生産する商品を買わないように呼びかけて不買運動を組織する争議行為戦術。ボイコットには、争議行為の直接の相手である使用者に圧力を加えるための不買運動である一次的ボイコットprimary boycottと、使用者と取引関係にある第三者に圧力を加えることによって不買運動を組織する二次的ボイコットsecondary boycottとがある。さらにボイコットには、その対象たる商品の性質によって、消費ボイコット、生産ボイコットとよばれるものもある。法的評価としては、一次的ボイコットと二次的ボイコットとは区別されており、一次的ボイコットは言論の自由の行使であり、正当な争議行為とされている。日本ではこの争議戦術は少なく、アメリカではよく行われている。
[村下 博]