改訂新版 世界大百科事典 「セストラム」の意味・わかりやすい解説
セストラム
Cestrum
ナス科キチョウジ属Cestrumの常緑低木もしくは小高木で,熱帯および亜熱帯アメリカに約150種が分布する。葉は全縁で互生し,花は下垂し,集散花序ないしは総状花序につき,筒状の花は赤・黄・帯緑・白色などである。キチョウジ(黄丁字)C.aurantiacum Lindl.はグアテマラ原産。半つる性で長さ1.5m以上に伸び,葉は卵状披針形,総状花序で頂生ないし腋生(えきせい)し,花は橙黄色である。ヤコウカ(夜香花)C.nocturnum L.は,ヤコウボク(夜香木)の別名やnight jasmineの英名もある。熱帯アメリカ,西インド諸島原産。高さは3.5mにもなり,細い枝を多数出す。葉は長楕円状卵形,花は集散花序で腋生し,帯白緑色である。温室では春から秋にかけて咲き,夜間,芳香を放つため有名である。ベニチョウジC.purpureum Standlleyはメキシコ原産。半つる性で,高さは3mになる。枝は湾曲し,下垂する。葉は卵円状披針形で,裏面には軟毛がある。花は集散状総状花序でつき,頂生し,紫紅色で美しい。冬は3~5℃以上あれば枯れず,ヤコウカは九州南部では戸外で越冬する。ひなたに置き,肥えた土に植える。繁殖は挿木で,5~7月がよい。
執筆者:坂梨 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報