ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソロス」の意味・わかりやすい解説
ソロス
Soros, George
ハンガリー生まれのアメリカ合衆国の投資家,慈善活動家。ブダペストのユダヤ人家庭に生まれ,少年期にはナチスのユダヤ人迫害を避けるため,厳しい逃亡生活を経験した。1947年家族とともにロンドンに移住。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで哲学を学んだあと,商業銀行に入行。1956年ニューヨークに渡り,ヨーロッパ系証券会社でアナリストとして急速に頭角を現した。1973年,先物取引やオプション取引で相場変動をヘッジ(回避)しながら株式や為替レートに投機するヘッジファンド「クォンタム・ファンド」を設立。大胆な投資戦略で驚異的な運用成績を上げ,「現代の錬金術師」として名をはせた。1992年9月のヨーロッパ通貨危機では,大量のポンド売りを浴びせイギリスを通貨切り下げに追い込んだことから,「イングランド銀行を打ち負かした男」との異名をとった。数日間で 150億ドル相当を投じ,約 10億ドルの利益を手にしたといわれる。世界的な金融不安を引き起こしたとの批判を受ける一方で,1979年には,ハンガリーなど中東欧諸国の民主化を支援するため,オープンソサエティ財団を創設。利益の一部を活用し,大規模な福祉事業に乗り出した。ソビエト連邦崩壊後は拠点をポーランドやロシアにも広げた。著書に『ソロスの錬金術』The Alchemy of Finance(1987)などがある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報