タクトシステム(その他表記)tact system

改訂新版 世界大百科事典 「タクトシステム」の意味・わかりやすい解説

タクトシステム
tact system

流れ作業システムの一形態であって,一連の作業工程系列を構成するそれぞれの工程をあるタクト拍節)のもとに同時に進行させる生産作業方式をいう。すなわち,あるタクト時間内にどの工程も与えられた作業を完了し,それぞれ同時に次工程へ進む。次工程への進行方法には大別して2通りあり,その一つは各工程の作業者班が静止したままで加工対象を次工程へ移動させる方法であり,他の一つは各工程の加工対象を静止したままで作業者班をそれぞれ次工程へ移動させる方法である。いずれの場合においても,各作業者班は定められたそれぞれの作業工程内容を遂行するよう専門化されている。一般にタクトシステムは,比較的大物の加工対象の組立作業(例えば,最初ころの適用例としては航空機の組立作業)に適用される。各工程を自動化し,加工対象をある一定のタクトで次工程へ移動させる方法として,トランスファーラインがある。
流れ作業
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タクトシステム」の意味・わかりやすい解説

タクトシステム
tact system

流れ作業の一方式。流れ作業で,コンベヤが絶えず流動するコンベヤシステムに対し,加工時間だけコンベヤが停止する律動方式。全工程が同時に作業にかかり,同時に終って,加工物は一斉に次の工程に移動するので,コンベヤ停止中の加工作業が主体となる場合に採用され,工程の完全な同期化前提となる。ドイツが第2次世界大戦中,航空機の多量生産を計画したとき,機体の組立作業に初めて用いた方式で,その時間的間隔が,音楽演奏の指揮者が指揮棒を振るように正確であるというところから,タクトシステムと名づけられたという。おもに組立作業に利用され,日本でも,車両の組立,ラジオセットの組立などに使われている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タクトシステム」の意味・わかりやすい解説

タクト・システム
たくとしすてむ
tact system

流れ作業において、作業一工程が終わるごとに製品が一ピッチ移動する方式。節動(せつどう)作業方式ともいう。一定時間ごとに、製品が各タクト(拍節)を担当する作業班に規則的に移動し、加工される。この製品の加工中は静止している。この方式は、加工中も移動し続けるコンベヤー・システム(流動作業方式)がもつ非人間的欠陥をある程度改善できるが、それだけ作業能率は低下することになる。

[玄 光男]

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