コンベヤの流れに沿い製品の加工手順に従って多くの作業工程を配列し,加工対象をコンベヤを用いて移動させながら加工を進めていく生産方式,とくにコンベヤを用いて全工程を同期化して大量生産を達成しようとする生産方式をコンベヤシステムという。一般に特定の品種を連続的に繰り返し生産する大量生産においては,加工手順に従って配列された工程系列,すなわち生産フローラインを設置する。機械組立工業においては,この工程系列における作業が手作業で行われる場合を手作業フローラインmanual flow line,機械で自動的に行われる場合をトランスファーラインtransfer lineという。前者はさらに加工対象の移動にコンベヤを使用しないノンメカニカルラインnon-mechanical lineと,コンベヤを使用するメカニカルラインmechanical lineとに分けられる。このメカニカル手作業フローラインが狭義でのコンベヤ生産システムを構成し,作業組織の観点から〈機械的流れ作業組織〉あるいは〈コンベヤ式流れ作業組織〉とも称される。
アメリカのO.エバンズは,流れ生産システムflow production systems,言い換えれば流れ工程系列flow processesの設計・実施の先駆者であった。彼はベルトコンベヤ,スクリューコンベヤ,バケットコンベヤの創始者であり,製粉工場でコンベヤを用いて自動工場を設計・建設しようと試みた。その年代は,1785年ごろのことである。またフォード自動車会社におけるコンベヤを用いた流れ生産は,1913年に始動した(フォード・システム)。
機械組立工業におけるコンベヤシステムは,作業者の移動の観点から,静止作業型と移動作業型に分けられる。前者は加工対象が小物,軽量物の場合に採用され,作業者が加工対象をコンベヤから取り出して加工する。後者は加工対象が大物,重量物の場合に採用され,加工対象がコンベヤに固定されていて,作業者がコンベヤの流れに沿って自分の受持工程域内を移動しながら加工する。
コンベヤシステムの設計に当たって重要なことは,日産量から算出したサイクルタイム(分/個)の決定,並列ライン数の決定と各作業工程内容,作業時間の決定,ラインバランシングlinebalancingなどである。付随して重要なことは,欠勤者や機械に故障があったときの処置,供給材料に欠品が生じたときの処置,ラインの途中で不良品が発生したときの対策などである。一般にコンベヤ作業では全工程が極端に分業化,細分化,単純化されていて,一つの作業工程での習熟化が容易である。しかし欠勤者が生じた場合にその工程を支援する必要が生じるので,一応は自分の受持作業工程が与えられていても,他の数工程の作業を担当できるよう作業者を訓練しておく必要がある。
優れたライン設計によれば,コンベヤシステムは生産性の観点からきわめて有効な生産方式である。その反面,作業のペースを規制し,細分化された単純繰返し作業のため,単調感とか人間疎外感に結びつく面があり,それが作業者の欠勤とか離職につながることもある。このような問題は,働きがいとか労働生活の質quality of work(ing) life(略称QWL)とかの観点から再検討されている(生活の質)。また従来の線列的な作業集団を分割して,いくつかの作業集団を構成し,それぞれの作業集団の自主管理活動に期待するような試みも行われている。どのような方式がよいかは,そのときどきの時代的背景とかその国や地域の事情によるし,その作業集団の構成員にも依存するので,一意的に最良の方法を示すことはむずかしい。
執筆者:新宮 哲郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…機械化された資本主義社会における人間疎外を告発し,機械による人間の奴隷化を風刺的に断罪する。巨大なベルトコンベヤシステムによる近代工場がチャップリン映画にあらわれるのはこれが初めてであり,浮浪者チャーリーから脱皮したチャップリンが,作業衣を着た工場労働者として登場する。形は昔ながらのスラプスティック・コメディだが,工場閉鎖,ストライキ,失業,街頭デモ等々,1930年代アメリカの慢性不況の冷厳な現実が描かれる。…
※「コンベヤシステム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新