翻訳|conveyor
原材料や機械部品や包装された荷物などを連続的に運搬する機械。似通った形態の荷の特定区間の運搬では,その連続性のゆえ,他の運搬手段に比べて著しく大きな能力を発揮する。コンベヤは生産や物流の各分野で広く用いられるが,その発達を促した要因の第1は,産業の大規模化に伴って原材料などの取扱量が増大し,とくに船による長距離輸送の前後につながる積出し・受入れ港湾や,工場の構内における大量運搬の手段が必要となったことであり,第2は,自動車産業に代表される多量生産型工業における流れ作業(コンベヤシステム)に適した機能的な搬送手段が求められたことである。今日でも,コンベヤはこれら二分野でもっとも多く利用されているが,また,作業工程間のつなぎ部分での材料や部品の移動という基礎的な用途や,荷物を行先別に高速で仕分けするというかなり高度な用途にも活用されている(仕分けコンベヤ)。また,水平や緩やかな傾斜での運搬に用いられるもののほか,垂直やそれに近い急傾斜の運搬に適した機種や,三次元の移送経路をとれる機種も,かなり早い時期から着用に供されている。コンベヤの運搬能力を所期どおりに発揮させるためには,その運動の速度に追随して円滑に荷を供給し排出することが必要であり,それを目的として,各種の供給・排出装置が用いられる。
コンベヤの構造はおしなべて簡単であるが,一方,取扱物の性状と運搬の目的に応じてきわめて多くの機種が作られており,その作動原理を異にするものも多い。
(1)ベルトコンベヤbelt conveyor 両端部に設けたベルト車にベルトを環状にかけ渡し,そのベルト上に載せた荷をベルトの移動によって運搬する。ベルトは駆動ベルト車とベルトとの間の摩擦力によって駆動される。所要の摩擦力を得るために,ベルトの緩み側に適度の張力を与える緊張装置が設けられ,また荷とベルトの重量を支え,かつベルトを円滑に運動させるために,全長にわたって多数のローラーを備える。ベルトとしては,通常,帆布やスティールコードを心材とし,これをカバーゴムで包んだゴムベルトが用いられる。ベルトコンベヤは,鉱石,石炭,穀類,土砂などのばら物の大量運搬の手段としてもっとも多く用いられ,また,かず物(個数を数えられる類似形態の荷)の扱いでも,航空貨物,郵便小包,一般商品などの搬送・仕分用や,生産工場の流れ作業用として利用される。
(2)チェーンコンベヤchain conveyor 環状の鎖(チェーン)を鎖車(スプロケット)により駆動し,チェーンの移動によって荷を運搬する。通常,取扱物の性状に適した載荷部分をチェーンに等間隔に取り付け,また,荷を含む移動部分の重量はレールによって支えられる。チェーンコンベヤは,流れ生産ラインや流通関係の施設でかず物の搬送用としてもっとも多く用いられる。種類はきわめて多いが,代表的なものをあげれば,2連チェーンのコンベヤ(もっとも一般的で,載荷部分の形態により各種の名称がつけられている),建物内上部に設置され曲線搬送も行うトロリーコンベヤ,ばら物を垂直または急傾斜で運搬するバケットエレベーター,ばら物自身の内部摩擦を利用して水平,垂直の運搬を行うフローコンベヤ,かず物を水平,垂直に運搬するスラットエレベーターなどがある。
(3)流体コンベヤ 鉱石,石炭,穀物,木材チップなどの粉粒体を,空気や水の流れに混ぜてパイプの中を運搬するもので,空気を利用する空気コンベヤpneumatic conveyor,水を利用する水コンベヤhydraulic conveyorなどがある。運搬経路の大部分がパイプのみであるから,経路を自由に選べるし,運搬物がこぼれたり飛び散ったりすることがないので環境面でも有利である。他面,消費動力は比較的大きく,また取扱物によってはパイプの磨耗が激しいという問題がある。穀類などの陸揚げに用いられる空気エレベーターは,流体コンベヤの特徴をよく生かした例である。
(4)その他のコンベヤ ころがり軸受の入ったローラーを多数並べ,この上に荷を載せて運搬するローラーコンベヤ,下部が半円形になったといまたはパイプの中でねじ状の羽根をもつ軸を回転させ,その推力を利用してねじ面に沿ってばら物を押し進めるスクリューコンベヤ(ねじコンベヤともいう),とい状の容器の中に荷を入れ,これに外部から連続的に振動を与えて荷をわずかずつ前進させる振動コンベヤ,低圧の空気を利用して荷と荷台の間に空気膜を作り,両者間の摩擦を小さくして荷の取扱いを容易にする空気フィルムコンベヤなどがある。ローラーコンベヤは単体としてはもっとも簡単な構造のコンベヤであるが,かず物の搬送用や仕分装置として,生産や物流のほとんどあらゆる分野で利用されている。
大部分のコンベヤは電動式である。クレーンと異なり,通常は一定速度で運転する機械であるから,コンベヤ単体の制御としては,とくに大規模なものや特殊用途のものを除いては格別高度の方式は必要としない。多数のコンベヤを組み合わせた生産ラインの運搬設備などでは,総合的な制御システムが採用されるが,この場合,個々のコンベヤについても,相互間の運動のマッチングを図りやすい速度制御方式が必要となる。
執筆者:林 文也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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