六訂版 家庭医学大全科 「たばこ誤食」の解説
たばこ誤食
たばこごしょく
Accidental ingestion of tobacco
(中毒と環境因子による病気)
たばこの毒性
たばこの有毒成分はニコチンで、紙巻きたばこ1本のニコチン含有量は10~20㎎です。たばこの箱に書かれているニコチン、タールの量は火をつけてフィルターから回収できる量であり、実際の含有量はその10倍以上です。この含有量から、致死量は成人で2~3本、乳幼児で約1本とされています。
しかし、ニコチンの溶出、体内への吸収には時間がかかり、またニコチンのもつ刺激性や強烈な
たばこ誤食は、6カ月~1歳半の乳幼児に多くみられ、日本中毒情報センターには毎年、およそ6000件の問い合わせがあります。
症状の現れ方
ニコチンは、薬理学的には自律神経作動薬に属し、自律神経、中枢神経、骨格筋に作用します。
急性ニコチン中毒の症状は、口腔内の
乳幼児が紙巻きたばこを誤食した場合は、約半数は無症状で経過します。残りの半数に発現する中毒症状のほとんどは、1時間以内にみられる吐き気・嘔吐と20時間前後に現れる下痢・軟便です。
日本では、紙巻きたばこの誤食で死亡したケースはありませんが、ニコチン農薬による死亡はいずれも中毒初期から意識障害、けいれん、呼吸麻痺、ショックを起こして急死しています。
治療の方法
乳幼児では、紙巻きたばこ2㎝以上(米国では2本以上)の誤食で胃の洗浄がすすめられていますが、量の判断は困難です。近年は、胃洗浄よりも活性炭の経口投与がすすめられるようになりました。有効な解毒剤はなく、重症の場合では生命を維持する対症療法が行われます。
応急処置はどうするか
口のなかにたばこが残っていないか、吐いたか、吐物中にたばこの葉があったか、たばこの残存量などから、どれくらい摂取したのかを確認します。2㎝以下の誤食は口すすぎを行って、家庭で経過を観察します。
吉岡 敏治
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報