タパ
たぱ
tapa
ポリネシアで、樹木の内皮をたたいてつくる樹皮布。樹皮布は熱帯地域にみられるが、ポリネシアでつくられているものはとくに精巧で、タパの名で知られている。タパの原料としてはカジノキを用いることが多い。製法は、木から樹皮をはぎ、その内皮を水につけて柔らかくし、木台にのせて専用の木槌(きづち)で薄くたたき延ばす。これを広げて乾燥させ、穴や弱い部分を補修してから所定の大きさにつなぎ合わせる。白布として用いられるもののほかに、手書きや、図案を切り抜いた型板の上に白布をのせ拓本をとる要領で模様がつけられるものもある。模様と色調には、地域により伝統的とされるものがある。タパ作りはおもに女の仕事で、少女は5、6歳ころから手伝い始め、15、6歳ころにはひととおりの技術を体得する。
[青柳まちこ]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
タパ
tapa
元来はポリネシア人の言語で,クワ,パンノキ,イチジクなどの木の樹皮からつくった紙状の布 (樹皮布 ) をいう。繊維からつくった布と比べると弱く,消耗品であったため,森林資源の豊富な中央アフリカ,インドネシア,ポリネシア,赤道南アメリカの熱帯森林地帯の織機を使用する文化のない地方の先住民によって製作使用されている。なかでもポリネシアのタパが最も美しく品質もよい。製法は簡単で,はぎ取った樹皮を水に漬けたり煮たりして柔らかくし,台の上で木槌でたたいて適当な厚さや大きさに伸ばし,太陽に当てて乾燥させ,植物性の染料で彩色する。模様は幾何学的な線を組合せたものが多い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のタパの言及
【コウゾ(楮)】より
…インドから太平洋諸島まで,熱帯・亜熱帯に広く栽培され,日本に及ぶ。樹皮の繊維を製紙に利用するほか,南方では樹皮をたたいて伸ばしタパと呼ばれる布をつくる。また果実はコウゾよりはるかに大型で,食用としての利用も可能であり,また楮実(ちよじつ)の名で漢方薬として利用される。…
【樹皮布】より
…インドネシア,ポリネシア,中央および赤道アフリカの熱帯森林地帯に分布する。最も美しくよく知られているものはポリネシアの〈タパtapa〉と呼ばれる樹皮布である。品質がよく,木版や型紙,手描きなどの手法を用いて,茶や黄褐色また黒の植物性染料で幾何学的文様を染める。…
【ポリネシア人】より
…とくにタロイモの栽培はさまざまの環境条件に応じた工夫がみられ,棚田や灌漑施設がつくられ,低いサンゴ礁では水がないため,溝を掘って堆肥が入れられていた。衣服はクワ科植物の内皮をたたきのばしたタパtapaと呼ばれる樹皮布が織布の代りに用いられ,すぐれた品質をもっていた。ポリネシアではアルコール性飲料は知られず,コショウ科の植物からつくられた[カバ]は麻酔性があり,首長の会合などのとき特別な作法で飲まれた。…
※「タパ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」