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拓本 たくほん

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

拓本
たくほん

器物の形や刻銘,文様などを墨によって紙に写し取る方法。中国で始り,金石学の流行とともに盛んとなり,朝鮮,日本などに広がった東洋独特の手法である。乾拓と湿拓の2種の方法がある。前者は和紙の上に釣鐘墨などを当てて写し,後者は生乾き画仙紙の上に「たんぽ」に油墨などをしませたものを当てて写し取る。

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デジタル大辞泉の解説

たく‐ほん【拓本】

木・石・器物などに刻まれた文字・文様を紙に写し取ったもの。また、その技法。湿拓乾拓とがある。石摺り。搨本(とうほん)。

出典|小学館
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百科事典マイペディアの解説

拓本【たくほん】

碑や器物などに彫り込まれた文字や文様を紙に写しとったもの。紙を水で被写物にはり墨汁を用いる湿拓と,紙をただ置いて釣鐘墨で上から摺(す)る乾拓とがある。
→関連項目魚拓碑碣法帖

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世界大百科事典 第2版の解説

たくほん【拓本】

搨本(とうほん)とも称し,日本では石摺(いしずり)ともいう。中国で石碑や銅器に刻された文字や図像を,特殊な方法で紙の上に直接写し出したもの,またその技法をもさす。これには二つの方法があり,一つは実物の上に乾いた紙をあて,その表面を特別の軟らかい墨(釣鐘墨)でこすって写し出すもので,乾拓法という。英語で拓本のことをラビングrubbingというのは,厳密にはこれをさすわけである。いま一つは湿拓法といい,実物の上に紙(今日では普通に画仙紙)を水張りにし,刷毛(はけ)や布切れで十分に打ち込んで半乾燥状態になるのを待ち,たんぽ(中国では墨包という)に墨をつけて文字や図像を叩き出す

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大辞林 第三版の解説

たくほん【拓本】

石碑や金属器などに刻まれた文字や模様を、紙を当てて写し取ったもの。石摺いしずり。 → 乾拓かんたく湿拓しつたく

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

拓本
たくほん

石や金属に彫られた文字や模様を、原形のまま紙に写し取ったもの、およびその技法。瓦(かわら)、磚(せん))、古碑、板碑、記念碑、文学碑、墓碑、釣鐘、磨崖仏(まがいぶつ)、鐔(つば)、刀銘、硯(すずり)、コインなどがその対象となる。
 活字、印章、版画などは、写し取ったとき、文字を正面向きとするために左文字につくられており、魚拓では魚に直接墨汁を塗って紙に押し当てるため左右反対になるが、拓本は原物に紙を当て、その上から墨を打って凹凸の文様を写し出すので、文字はそのまま正面に原寸大で写し出され、刻み込んだ部分は白く、彫り残した部分は黒くなる。文字の点画や線の微妙な部分まで原寸大で見ることができるため、考古学や、碑文・鐘銘などの文字文章を研究する金石学の分野では、拓本は不可欠の重要な資料であり方法といえる。また、白と黒のモノクロームで表現される簡素な美は、採拓者、墨の濃淡、天候その他の条件によって一枚一枚できあがりが異なり、数にも限りがあるので、その原始性が芸術作品として鑑賞の対象となっている。また、植物の葉や木目(もくめ)、木はだを拓本にとって、自然の造型美を味わう葉拓(ようたく)も拓本の一種である。[大山倫子]

拓本の歴史

中国では真跡を紙本墨書で複製する場合、籠字(かごじ)にとり輪郭の中を墨で塗りつぶす双鉤填墨(そうこうてんぼく)が早く行われていたが、これと並んで碑の模本復刻も盛んに行われた。敦煌石窟(とんこうせっくつ)で発見された唐の太宗の『温泉銘』の拓本に、永徽(えいき)4年(653)の墨書があり、すでにこのころ拓本技術があったことがわかる。古くは打本(うちほん)あるいは搨本(とうほん)といい、碑から直接に写した拓本と、それをさらにもう一度石や木版に彫ってから拓本にしたものがあり、前者を原拓、後者を模本とか模拓という。これらの拓本を折本に仕立てたものを法帖(ほうじょう)といい、書道の名品として鑑賞され、学習の手本とされた。
 日本では古くは石摺(いしずり)といい、技法は中国から伝来したと思われる。奈良時代には碑本が舶載され、鎌倉時代には仏照禅師によって達磨(だるま)以下禅僧の画像拓本がもたらされている。日本での採拓記録として、虎関師錬(こかんしれん)の『元亨釈書(げんこうしゃくしょ)』に、義空が東寺の断碑を模印したことが記されている。これは拓本が金石文研究に使われたわが国最初の例といえよう。江戸時代に学芸が盛んになるのに伴い、古瓦(こがわら)・古碑・墓碑などの拓本が多くとられて珍重されるようになる。書家細井広沢(こうたく)は、模拓についての研究を行い注目された。写真技術の発達した現代でも、拓本は考古学や美術史研究のうえで重要である。[大山倫子]

拓本のとり方

乾拓と湿拓の二つの方法がある。乾拓はコインやメダルの上に紙を当てて鉛筆の芯(しん)を斜めにしてこする遊びと同じ方法で、原物の上に紙を当て、動かないようにしっかりと押さえ、固形の拓本墨でまんべんなくこすりつけると、高いところは濃く、低いところは薄く写る。小品や繊細な文様のあるものや、ぬらすことのできない木彫りの作品などでは、この乾拓法を用いる。[大山倫子]
湿拓法
原物の表面に当てた紙を、上から水でぬらして張り付け、墨のついたタンポでたたいて写し取る方法。碑などの採拓にはほとんどこの湿拓法が用いられる。(1)原物の寸法を測り、泥やほこりを払う。ただし、苔(こけ)などはなるべくそのままにし、現状を損じてはならない。
(2)紙を適当な大きさに切り、碑面に当てて刷毛(はけ)で水を塗るか、霧吹きでまんべんなく湿らせる。四隅をセロファンテープで軽く留めるとやりやすい。ただ、テープなど粘着剤使用を禁じられている場合もあるので注意すること。
(3)碑面と紙の間にできた気泡を、文字の中や碑面の外へ押し出し、紙を碑面に密着させる。これには、羅紗(らしゃ)布や、ぬらしたタオルを固く巻いたものを用いる。
(4)さらに、毛の短いブラシか、脱脂綿をフェルトに包んで棒状にしたもので、打ち込むように手早く、かつ念入りにたたき、文字の線がはっきり出るようにする。
(5)紙がいくぶん湿り気を残しているうちに、タンポで採拓する。タンポは二つ持ち、一方のタンポに墨をつけ、もう一つのタンポとこすり合わせて墨加減をならし、余分の紙で濃さを確かめたら、手早く紙面全体をたたいてゆく。初めは薄くし、何度も重ねてたたいて墨の濃さを一様にする。タンポは紙面に対して直角に、ボールが弾むように軽く打つ(けっして強くたたいてはならない)。全体にむらなく打てたら、別の小さいタンポで細部を打って完成させる。
(6)紙が完全に乾ききらないうちに注意しながらはがし、広げておいた新聞紙の上に置いて乾かす。乾いたら筒状に巻いて保存する。拓本を裏打ちしたものは、額装や軸に仕立てて鑑賞することができる。[大山倫子]

拓本の用具


(1)紙 乾拓には礬水(どうさ)引きの薄美濃紙(うすみのがみ)がよく、湿拓には一般に画牋(がせん)紙を用いる。中国産の画牋紙(宣紙(せんし))は粘りがあり、拓本にもっとも適している。
(2)墨 乾拓の場合は拓本墨(石花墨)でこする。湿拓には油墨を用いる。1、2枚とる程度なら、品質のよい墨を濃く摺りためて用いればよい。専門家は、植物性油と煤(すす)の粉を煮つめ、これに細かく切った古綿をかき混ぜて練った墨肉を用いる。墨汁はむらをつくり、水がかかるとにじむので、拓本には不適当である。
(3)タンポ 綿(わた)を布で包んだもので、墨をつけて紙面をたたくのに用いる。包む布は糊(のり)気のない羽二重(はぶたえ)か紅絹(もみ)を最上とするが、細かい目の化学繊維でもよい。また、麻布のような粗い布目を用いて、特殊な効果を出す場合もある。中に入れる綿はもめん綿がよく、脱脂綿は適さない。綿を丸め、厚さ4、5センチメートルくらいのスポンジを綿の球より大きめに丸く切ったものをかぶせ、その上から布で包む。根元のほうに丸く切った厚紙をのせ、布にしわが出ないように絞り込み、紐(ひも)で根元をくくる。別に綿か布を棒状にしたものを把手(とって)として、絞り込んだ中央につける。把手は握るのに適当な長さとする。タンポは大(直径7、8センチメートル)2個、中(同約5センチメートル)1個、小(同約2センチメートル)1個は用意したい。大きい面は大きいタンポでおおらかな味を出し、細かい輪郭は小さいタンポを用いてたたくとよい。
(4)その他 水刷毛は障子張りなどに使う糊刷毛でよく、毛足の長めで軟らかいものを選ぶ。たたき刷毛は毛足の短いもので、古い洋服ブラシなどで代用できる。また、湿拓には水が欠かせないので、水筒はかならず用意する。[大山倫子]

採拓の心得

かならず碑の所有者、管理者などの許可を受けてから採拓する。重要文化財などは、原則として、願い出ても許可されないと考えてよい。絶対に直接碑面に墨を塗ってはならない。碑を汚すばかりでなく、反対に写って拓本の意味をなさない。碑を損傷したり、汚れたりしないように注意するのはもちろんだが、碑の周囲の草木を踏んだり、景観を損じないようにすることもたいせつである。採拓には、風のあるとき、雨天は不適当であり、炎暑の好天も乾きすぎてやりにくい。天候としては曇天がもっとも適している。[大山倫子]
『内田弘慈著『拓本技法図典』(1989・創元社) ▽篠崎四郎著『図録 拓本入門事典』(1991・柏書房) ▽比田井南谷・筒井茂徳編『拓本で見る中国書道史 殷~唐』(1997・天来書院) ▽本山ちえ著『拓本入門』(保育社・カラーブックス)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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