カジノキ(読み)かじのき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カジノキ」の意味・わかりやすい解説

カジノキ
かじのき / 梶



[学] Broussonetia papyrifera Vent.

クワ科(APG分類:クワ科)の落葉高木。高さは10メートル以上、幹の直径は約60センチメートル。葉は先のとがった広卵形でややゆがみ、浅く3裂するものが多く、長さ15センチメートルほどで肉厚、表面はざらつき、裏面には毛が密生する。若木の葉は掌状に深く3~5裂し、それぞれの裂片は浅く切れ込む。また老木では、葉は楯(たて)形となる。雌雄異株初夏に開花し、雌花の穂は直径1.5センチメートルほどの球形紫色である。雄花の穂は黄褐色で尾状、長さ6センチメートルほどで垂れ下がる。秋に、直径2センチメートルほどの球状に集まった果実が赤く熟す。関東地方南部、東海地方、近畿地方以西の山地に生え、中国大陸南部、台湾に分布する。同属のコウゾは、野生種のヒメコウゾB. kazinoki Sieb.(関東地方以西に自生し、単にコウゾともよばれる)とカジノキとの雑種と考えられている。両者ともよく似ているが、コウゾは雌雄同株。

 枝からとれる靭皮(じんぴ)繊維は、長さ5.5~11ミリメートルで多少のよじれがあり、和紙原料となるが、品質はコウゾより劣る。コウゾに混ぜたり、提灯(ちょうちん)紙や傘紙に利用される。畑の縁などで粗放栽培されていたが、最近では需要がほとんどなく、農業的栽培はみられなくなった。

 カジノキの葉には墨がよくのり、古くは、とくに七夕(たなばた)のときなどに、葉に歌を書いた。カジノキは神事と関係が深く、家紋にもされている。

[星川清親 2019年12月13日]

文化史

ポリネシアではもっとも有用な木の一つで、民族移動に伴われ、イースター島を東限とするポリネシアのほぼ全域に広がっている。樹皮は綱になり、たたいて紙状に伸ばしタパにする。タパは衣装や飾りに使われ、トンガなどでは現在もその伝統が残る。日本にもかつて同じ用法があり、栲(たえ)とよばれたカジノキから白妙(しろたえ)がつくられた。カジノキの実は食用になり、青森県八幡(はちまん)崎の縄文時代晩期の遺跡から出土している。

[湯浅浩史 2019年12月13日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カジノキ」の意味・わかりやすい解説

カジノキ(梶の木)
カジノキ
Broussonetia papyrifera

クワ科の落葉小高木で,熱帯アジアの原産といわれる。高さ3~5m,ときに 10mに達し,よく分枝する。葉は柄があって互生し,厚くて表面がざらつき,若木ではクワの葉のように3~5裂する。葉柄と葉の裏面にはあらい毛が密に生える。雌雄異株で,雄花群は長い尾状花序をつくって下垂する。雌花序は球形で,紫紅色の花柱がとげのように密に集る。果実は赤熟し集合果をつくる。枝の皮 (靭皮繊維) が和紙の原料となり,古くから西日本で栽培されてきた。野生化したものも各地にみられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android