日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダブル・デフレーション」の意味・わかりやすい解説
ダブル・デフレーション
だぶるでふれーしょん
double deflation
国民経済計算において、経済活動の付加価値額を実質化するために用いられる計算方式。経済活動についての種々の統計数値については、異なった時点間での実際の活動の大きさを比較するなどの際に、その間の価格の変動による見かけ上の差を除去する必要があり、そのために、実質化ということが行われる。しかし、その実質化の対象は、活動の大きさを示す金額を、数量と価格とに分離できるものに限られる。ところが、各産業の生産活動によって新たに生み出される付加価値は、数量と価格に分離できない所得としての側面と、生産要素である労働および資本が提供したサービスとして実質化の対象となりうる側面との、両面を備えている。国民所得における総支出と総生産の二面等価を統計的に達成するためには、総生産の内容である付加価値を生産要素の提供したサービスとして実質化することが必要となる。しかし、それについて、価格変動を直接に消去するデフレーターを作成することが困難であるため、付加価値が産出額から中間投入額を差し引いたものであることに着目して、産出額と中間投入額とを実質化し、前者から後者を差し引き計算して得られた値をもって付加価値額の実質値とする。これが付加価値を実質化する手続としてのダブル・デフレーション方式とよばれるものである。
[高島 忠]