ダークツーリズム(読み)だーくつーりずむ(英語表記)Dark tourism

デジタル大辞泉 「ダークツーリズム」の意味・読み・例文・類語

ダーク‐ツーリズム(dark tourism)

戦争や災害の跡地など、人の死や悲惨な出来事にまつわる場所を訪ね、教訓を学びとることを目的とする旅行。

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共同通信ニュース用語解説 「ダークツーリズム」の解説

ダークツーリズム

被災地戦跡、公害の発生地といった悲劇の地を巡る旅行。「負の歴史」を学び教訓とすることなどが目的で、国際的にはポーランドのアウシュビッツ強制収容所跡やウクライナチェルノブイリ、被爆地の広島長崎などが知られる。1990年代に欧州で提唱され、東日本大震災後、文化人らが東京電力福島第1原発の一帯を観光地化する構想を提言したことで日本でも認知度が上昇した。2013年には「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補に選ばれた。

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知恵蔵 「ダークツーリズム」の解説

ダークツーリズム

戦争・虐殺・災害・公害・事故が起こった被災地や、人権にまつわる不幸な歴史の残る場所を訪問する観光のこと。死・悲劇などの記憶を共有し、史実や被害者に理解を深め、追悼することなどが狙いである。ブラックツーリズム(Black tourism)、悲しみのツーリズム(Grief tourism)とも呼ばれる。広島の原爆ドームや、ポーランドのアウシュビッツ強制収容所なども訪問地の一つ。また、「ダークツーリズム」という言葉は、2013年の「新語・流行語大賞」にノミネートされた。
ダークツーリズムは、学術的にはグラスゴーカレドニアン大学(スコットランド)の教授であるジョン・レノンマルコムフォーリーによって1990年代に提唱された。日本国内ではレノン、フォーリーに依拠する流れで、観光学を専門とする追手門学院大准教授の井出明らが研究を進めている。
ダークツーリズムの主な観光地としてすでに知られているのは、アウシュビッツ強制収容所を含めホロコーストに関連した施設や、チェルノブイリ原発事故の現場、米・同時多発テロの犠牲者を追悼するニューヨークグラウンドゼロ、カンボジアのトゥール・スレン虐殺博物館など。日本では広島・長崎の平和記念公園や熊本の水俣病資料館、沖縄のひめゆりの塔、日航機墜落事故現場である御巣鷹山などが挙げられる。教育現場ではすでに校外活動や修学旅行の訪問先としてこれらの地を巡ることが行われているので、一般向けの観光の一つのジャンルとして、事業者が提案したり、雑誌が特集したりするなどして、注目を集めている。
資料館・博物館となっている施設では、被害者やその遺族が“語り部”として負の歴史を解説したり、体験を述べたりする取り組みもなされているところが多い。公害が起こった地域では、かつて汚染されていた河川や土壌、海域などの近くにまで案内し、現在までどう環境が改善されてきたかを知らせるツアーなどを実施している自治体もある。
また、多くの人命が失われた歴史に限らず、人権問題と関係した施設もダークツーリズムの訪問先となっている。各地のハンセン病療養施設、人身売買が行われた所、産業の衰退を今に伝える炭鉱街や廃虚、刑務所跡、性産業に関連した地域などがこれに当たる。
2015年7月、ミリオン出版がダークツーリズムに特化した旅行雑誌として季刊誌「ダークツーリズム」を創刊した。戦争跡地や災害被災地の紹介に加えて研究者の論説などを掲載し、負の歴史を学ぶ内容となっている。

(若林朋子 ライター/2016年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダークツーリズム」の意味・わかりやすい解説

ダークツーリズム
だーくつーりずむ
dark tourism

大規模災害の被災地、戦争の激戦地など多くの人が犠牲になった場所を訪ねる、観光の一ジャンル。娯楽を目的とした通常のツーリズムと区別した呼称である。「ブラックツーリズム」black tourism、「悲しみのツーリズム」grief tourismなどともよばれる。ダークツーリズムの主要なスポットとしては、日本の広島平和記念公園、オシフィエンチム(ポーランド)のアウシュビッツ‐ビルケナウ博物館、ニューヨークのグラウンド・ゼロ(アメリカ同時多発テロにより倒壊したツインタワービル跡地)、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所跡地などがある。ダークツーリズムの基本的な目的は、その悲惨さを後世に伝えていくために関連施設を保存すること(保全目的)や、現地を訪れることで災害や戦争の悲惨さを追体験すること(学習目的)にある。ただし、周辺は宿泊施設や土産(みやげ)店などが立ち並ぶ観光スポットになるため、被害者や遺族の悲しみをビジネスに利用しているに過ぎないとの批判もある。また、併設される資料館などには中立的立場を逸脱し、政治的に偏った立場からの展示がなされることが多い点も批判の対象になっている。日本では福島第一原子力発電所の跡地をダークツーリズムの対象地として後世に残そうという動きがある。

[編集部]

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知恵蔵mini 「ダークツーリズム」の解説

ダークツーリズム

戦跡や災害被災地など、悲劇・死・暴虐にまつわる場所を訪問する観光のこと。ブラックツーリズム(Black tourism)、悲しみのツーリズム(Grief tourism)とも呼ばれる。学術的には、1996年、グラスゴーカレドニアン大学(スコットランド)の教授であるジョン・レノンとマルコム・フォーリーによって提唱されたものだが、「アンネの日記」で有名なユダヤ人アンネ・フランクの隠れ家を訪れるなど、提唱以前から旅の一形態として世界では広く知られている。代表的な旅行対象地には、原発事故のチェルノブイリ、9.11テロのニューヨーク・グラウンドゼロ、ナチスドイツによるアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所、カンボジアのトゥール・スレン虐殺博物館、日本では広島平和記念公演や水俣病資料館などがある。13年8月には、福島第一原発事故に関連して、文化人らが「福島第一原発観光地化計画」を立案した。

(2013-9-12)

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