改訂新版 世界大百科事典 「チオルコフスキー」の意味・わかりやすい解説
チオルコフスキー
Konstantin Eduardovich Tsiolkovskii
生没年:1857-1935
ロケット工学の先駆的研究を行ったロシア,ソ連の科学者。正しくはツィオルコフスキーと読み,〈宇宙ロケットの父〉とも呼ばれている。リャザンの生れ。9歳のとき病気のためにほとんど耳が聞こえなくなったが,独学で数学,物理学などを学び,1880年中学校教師に採用され,数学を教えるかたわら科学研究を始めた。80年代の彼の研究は飛行船に関したものであったが,90年代には近代航空機の原型というべき形態を考察し,97年にはロシアで初の風胴を製作した。一方,彼の興味は早くから宇宙にも向けられており,1883年には反動を利用するロケットは宇宙空間でも飛行可能であることを指摘,さらに86年にはアポロ計画に驚くほど似た宇宙旅行構想をすでに発表していた。97年,今日では常識となっている運動量の関係,すなわち質量と速度変化の関係を定式化し,1903年の《反動装置を用いた大気空間の研究》では,それに加えて液体(燃料)ロケットの提案を行った。彼のロケット研究は,なかなか認められなかったが,ロシア革命後は19年科学アカデミーの会員に選ばれたり,奨励金を受けるなど国の内外で評価されるようになった。彼は以後晩年まで,多段式ロケットや束ねロケットなどの研究を行っており,これらは今日においてもロケット工学の根幹をなすものである。
執筆者:川口 淳一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報