知恵蔵 「チャイナショック」の解説
チャイナショック
これまで、1971年のドルショック(ニクソン・ショック)、73年や79年のオイルショック、近くは2008年のリーマン・ショックなどのように、特定の要因を契機として、株価の暴落、市場の崩壊などが起き、日本や世界に及ぶ経済活動の混乱と停滞が生じた。中国市場に危機が訪れれば、これらと同規模の深刻な影響が出ると懸念されている。中国は1978年以来の改革開放路線により、空前の経済成長を遂げた。GDP(国内総生産)は国別では世界第2位、日本の2倍を上回る10兆ドルと、世界最大である米国の6割に匹敵する規模に膨らんだ。また、輸出入貿易総額も4兆ドルを超え、世界最大の水準になっている。しかしながら、急成長はインフレを招き、国民及び地域間の格差を拡大させ、公害や資源の浪費など様々な問題を拡大させている。また、社会主義市場経済を標榜(ひょうぼう)する経済政策は、必ずしもうまくコントロールされているとはいえない。中国政府は「成長はしているが過熱はしていない」との見解ではあるが、中国の経済成長が鈍化していることは明らかであり、諸外国の投資家筋からはすでにバブル崩壊が始まっているとの見方も強い。その一方で、2007年3月にも上海株が急落し、日経平均が大きく値を下げ、チャイナショックが囁(ささや)かれていたが、その後大きく持ち直したことなどから楽観的な見方に立つ専門家もある。上海の株価指数(1990年12月19日を100とする)は2000から3000前後で推移していたが、2015年6月に5000ほどに急騰、7月に急落と乱高下し、中国政府の株価維持のテコ入れで持ち直したものの、9月までには3000程度で低迷している。これに伴い、日経平均やダウ平均も下降、円高が追い打ちをかけるなど、日本への影響が憂慮されている。市場経済である以上は変動は避けられないし、中国政府の市場介入が必ず良い結果を導くという保証もない。中国経済が世界に与える影響はかつてなく大きくなっており、現在の世界経済を底上げしているのも中国経済である。その実体経済が混迷するようなことがあれば、日本や世界への影響は計り知れず、経済界は固唾(かたず)をのんで推移を見守っている。
(金谷俊秀 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報